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日本国内におけるFintechサービスのさらなる発展に向けて

【「知創の杜」フォーカスシリーズ】 Fintech(フィンテック)

このシリーズは、富士通総研が発行している情報誌「知創の杜」の中から旬なテーマを取り上げ、実際のビジネスに取り組んでいるコンサルタントを交え、対談形式でお届けするシリーズです。第4回のテーマは「Fintech(フィンテック)」です。

(左から)長堀泉、小鈴裕之氏、隈本正寛
※松原義明はシリコンバレー(FLA)よりWeb会議で対談に参加

最近のFintechの概況

――この1年のFintechの状況を概観いただけますか?

隈本 日本でFintechに関して初めて大きくメディアに取り上げられたのは2015年2月頃だと思いますが、言葉自体は10年以上前から存在しています。当時は銀行の勘定系システム、営業店端末、ATM、インターネットバンキングといった単純な金融ICTを指して「Fintech」と呼んでいました。しかし、近年ではICTを駆使して、利用者の立場でより利便性が高く、革新的で、使い勝手の良い、使っていて楽しい金融サービスを提供することをもってFintechと呼ぶように変わってきているのが特徴です。
最近では、銀行だけではカバーしきれない部分に、様々なベンチャー企業が新しいサービスを届け始めています。日本でも最近では多くのFintech企業が金融サービスやその関連サービスを手広く提供しています。一方、伝統的な金融機関がFintechサービスに取り組む例も出てきています。そのような中、ICTベンダーにおいては、富士通がFIFJ(Financial Innovation For Japan)のような大規模なコンソーシアムを設立するなど、2015年は日本にとってのFintech元年だったと思います。

――金融機関やFintech企業(注1)、ICTベンダーがFintechサービス普及に向けて積極的に動いたことに加えて、政府がこうした動きを後押ししたことが大きいと思います。小鈴さんは、前任のみずほ総合研究所に在任されていた際、金融庁の「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」に参加されていましたが、その辺りをお話しいただけますか?

小鈴 裕之 氏
株式会社みずほフィナンシャルグループ
リサーチ&コンサルティング業務部 次長
「2015年金融審議会専門委員」

小鈴 Fintech企業の活動が活発化して金融機関もその対応を加速させていく中、日本の金融規制は伝統的な金融業のあり方を前提とした枠組みとなっており、環境の変化を踏まえた本格的な見直しは行われてきませんでした。特に銀行グループについては、個人から大企業まで幅広い取引先を持つ経済のインフラという側面もあることから、健全性の維持が強く求められており、業務の範囲は法令で列挙されたものに限定されます。こうした中、金融審議会は2015年末に、金融関連IT企業等への出資を容易化する方向性を打ち出しました。これにより、銀行グループにとっては将来の可能性を見据えてより柔軟で戦略的な対応を行うことが可能となり、利用者にとって利便性の高いサービスの提供につながることが期待されています。
金融審議会では、このほかにも「仮想通貨(ビットコイン等)に関する法規制の導入」も議論しています。

隈本 また、金融庁は、「平成27事務年度金融行政方針」の中の重点施策としてFintechへの対応を掲げており、2015年12 月に「Fintech サポートデスク」を設置し、主に法令面からのアドバイスを提供するサービスを始めています。このほかにも、日本銀行が「FinTechセンター」を設置し、自民党が「FinTechを巡る戦略的対応」を発表するなど、行政や政治のサイドにおいても、Fintechの重要性に対する認識が高まっています。

ロボアドバイザーなどで先行する欧米のFintech

――日本でも官民を挙げてFintechの普及に向けた体制が整いつつありますが、先行している米国/欧米の現状はどうでしょうか?

松原 義明
株式会社富士通研究所アメリカ
Research Analyst
<シリコンバレー(FLA)よりWeb会議で対談に参加>

松原 2015年はFintech企業がこれまでになく注目された1年だったと感じています。2014年12月のレンディングクラブ(注3)の新規上場(IPO)に始まり、主に中小企業や個人向けに資金提供を行うFintech企業が注目を集め、ユニオンバンクやシティバンクがレンディングクラブと提携するなど、金融機関の伝統的業務にもFintech企業が入り込んできました。「グローバルで金融機関の消費者金融に関する利益の6割がFintech企業によってDisrupt(破壊)される」とも言われており、これら融資を行うFintech企業が伝統的な金融機関のビジネスにどう影響を与えていくかに注目が集まっています。
最近では、米国だけでなくヨーロッパでも活況を呈している感があります。毎年2月にロンドンで開催されるFinovate Europeも多くの参加者で賑わっており、このほかにも1年を通じて多くのイベントが開催され、例えば、ロボアドバイザー(注4)などFintechサービスの旬の話題が取り上げられています。
米国に目を向けると、注目を集めるFintechサービスが即座に多くの人々に利用される環境には目を見張るものがあります。米国では基本的にクレジットカードやデビットカード、または小切手で支払うキャッシュレス文化が根付いています。例えば、レストランの支払いを割り勘にする場合などでも、スマートフォンを利用して個人間で送金しています。米国では小規模の小売店でもクレジットカードが使えることは広く知られていますが、モバイルPOSと呼ばれるスマートフォンやタブレットに簡易のクレジットカードリーダーを加えたものが主流であり、Fintechサービスが広く普及していることが分かります。

先ほどのレストランでの支払い等に活用されるサービスとしては、「Venmo」や「Square Cash」などが挙げられます。どちらも、スマートフォンにアプリをインストールし、手持ちのデビットカードを登録すると、わずか5分程度で利用できる送金サービスです。スマートフォンのアプリ上で送金相手と金額を指定するだけで支払いが完了するので、米国では多くの利用者が存在し、富士通研究所アメリカでは、皆が利用しています。

――海外のFintechブームの社会的背景や技術的背景には何があるのでしょう?

[司会]長堀 泉
株式会社富士通総研
第一コンサルティング本部長

隈本 富士通が1999年に出したスーパーコンピュータと最新のスマートフォンを比べると、今のスマートフォンの性能の方が30倍以上良いと言われています。イメージとしては、個人が理化学研究所の「京」を身に着けて生活しているくらいの環境変化です。このようなデバイスが普及することで、全国的にFace to Faceの拠点を整備しなくても金融サービスを提供する環境が整ったことが大きいと思います。さらに、ビッグデータ、人工知能(AI)といったキーワードが象徴するように、様々なデータを使って、これまで以上に、個人を特定したマーケティングや与信判断ができるような環境が整いつつあります。元々金融業は、取り扱うモノがほぼデータ化されており、デジタル化の影響を受けやすい産業であると言えます。
米国の1980~2000年生まれのミレニアル世代の7割は「銀行員の話を聞くくらいなら歯医者に行く」であるとか、「グーグルやフェイスブックやアマゾンが金融サービスを提供してくれるならそちらを利用したい」と考えている、という調査があります。普段利用しているデジタルサービスの方が彼らにとって身近だとすると、金融サービスもUX(ユーザー・エクスペリエンス)でないと受け入れられないのではないかという危機感がFintechの源泉ではないかと思います。

規制見直しにも積極的な海外行政、成果も着実に

――Fintechへの対応において先行していると言われる諸外国では、行政はどのような取り組みを行っているのでしょうか?

小鈴 Fintech企業が最も集積しているのは米国西海岸のシリコンバレーですが、近年の成長のスピードという観点で注目を集めているのは英国です。英国の金融行為規制機構(FCA)では、消費者のためにFintechを通じた金融サービスのイノベーションを起こすことを目的とした様々な政策をスタートさせています。具体的には、イノベーションの妨げとなっている規制を調整したり、法律を実際に適用する前に問題がないかを確認したりといったもので、相当な成果が上がったと発表しています。また、アジア太平洋地域でも、シンガポールやオーストラリアでスタートアップ企業の支援を行うなど、各国でFintechを推進する動きが活発化している状況です。

隈本 「サンドボックス」(注5)という概念も、ICT業界で多用される考え方であり、Fintechを象徴していますね。

小鈴 金融規制のあり方を考える際には、金融システムの安定性・健全性とイノベーション促進とのバランスのとり方が重要です。一方で、時代の変化のスピードは今後さらに加速していくことが予想される中で、金融規制が時代の変化を後追いするといった状況が続けば、金融が実態経済の足を引っ張ってしまうといった事態になりかねません社会や経済の変化のスピードにしっかりついていく枠組みを構築することが、金融機関の側にも、金融規制当局の側にも求められていると思います。

アイデアの接ぎ木でFintechのさらなる発展を

――今後、Fintechはどのような発展を遂げていくのでしょうか?

松原 今後はFintech企業がそのサービスを継続的に安定して提供できるのかにも注目が向けられると思います。というのも、2015年末から2016年の3月にかけて、海外で有望と思われていたFintech企業が3社も立て続けに事業停止をしてしまいました。(その後、救済する会社が現れて、事業を再開した会社もありますが)いくら利用者にとって使いやすいサービスであったとしても存続するとは限らず、今後はFintech企業の選別が進んでいく気もします。
しかし、Fintechの価値はICTを活用した利便性の高いサービスを提供することで、利用者の利便性向上や、これまで金融サービスにアクセスできなかった人々がアクセスできるようになることにあると考えています。例えば、ビル・ゲイツが運営する財団では、金融サービスにアクセスできない人たちに、スマートフォンを活用したモバイルマネーサービスを提供することを発表しています。このように、Fintechサービスの発展は、利用者がより豊かな生活を享受することに寄与する方向へ発展していくものと考えています。

隈本 正寛
株式会社富士通総研
シニアマネジングコンサルタント

隈本 多くのFintechはリーマンショック以降の景気拡大期に、伝統的な金融機関のプレゼンス低下の間隙を縫って、追い風を受けて拡大してきたところがあると思います。仮に一つのFintechサービスがうまくいかなくても、そのアイデアに新しいアイデアが接ぎ木され、Fintech全体としてはさらに発展していく動きにつながることが期待されます。Fintechに関連する中では「エコシステム」という言葉がよく利用されますが、Fintech企業同士やFintech企業と金融機関がつながっていくことで、全体として新しいものが生まれ、利用者価値が高まっていくことが望まれます。

――東京2020大会や「東京国際金融センター」構想に向けたみずほフィナンシャルグループ様での取り組みなどについてお話しいただけますでしょうか?

小鈴 当グループのシンクタンクであるみずほ総合研究所は、東京2020大会の専門委員会に参加していますここでは、具体的なアクションとして「金融インフラ(技術)の整備」についての提言が盛り込まれています。例えば、指紋や手のひら静脈、虹彩など複数の生体認証に対応可能な共通プラットフォームを構築し、利用者が選択した認証手段によって、競技会場への入場から会場内外での物やサービスの購入・決済までをシームレスに実現するというものです。東京2020大会の開催は先進的な取り組みを進めていく絶好の契機になると考えています。
また、東京都が中心となって掲げた1つのプランとして、大手町から兜町の一帯を「東京フィナンシャルストリート」と銘打って、整備していく方針が打ち出されています。このような構想も同時並行的に進んでいけば、Fintech進行のスピードはより加速していくと思われます。日本でFintechが持続的に発展していくためには、何事もポジティブに捉えてトライしていけるようなカルチャーに変化していくことができれば、全体としてより良い方向に向かって行けるのではないでしょうか。

――Fintechの推進に向けては、こうした共創によるイノベーションによって利用者にとってより価値のある金融サービスに生まれ変わることが重要ですね。今日はどうもありがとうございました。

(注1)金融×IT分野で活躍するスタートアップ企業。
(注2)ロボットにお金の運用を任せるタイプの投資信託。
(注3)借り手と投資家を結ぶオンライン市場の提供を手掛ける会社。
(注4)Fintechの一つで、いくつかの質問に答えるだけで、自動的にその人に合った配分で投資をするサービス。
(注5)外部から受け取ったプログラムを保護された領域で動作させることにより、システムが不正に操作されるのを防ぐセキュリティ機構。

知創の杜(フォーカスシリーズ)Fintech
「日本国内におけるFintechサービスのさらなる発展に向けて」

当記事の詳細をPDFでご覧いただけます。

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