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デジタルマーケティングは「生活者に寄り添う」視点が不可欠

【「知創の杜」フォーカスシリーズ】デジタルマーケティング

このシリーズは、富士通総研が発行している情報誌「知創の杜」の中から旬なテーマを取り上げ、実際のビジネスに取り組んでいるコンサルタントを交え、対談形式でお届けするシリーズです。第3回のテーマは「デジタルマーケティング」です。

(左から)安藤美紀、高木友博氏、今村健

デジタルマーケティングの市場動向

――デジタルマーケティングが話題になっていますが、本格的に取り組んでいるお客様はまだそれほどいらっしゃらないように思います。市場動向はいかがでしょうか?

高木 友博 氏
明治大学 理工学部
情報科学科 教授

高木 ネットビジネスは小売業の売上全体の10%程度で、残りの90%はまだデジタル化されていないのが現状ですが、地上波の民放の広告主がマス広告からデジタルに移しつつあるのは明らかです。例えば、サイバーエージェントはインターネットテレビを始めました。
同じコンテンツを届けても、電波では視聴率しか分かりませんが、インターネットはユーザーの挙動が全部分かります。そうなると、現在テレビが主導の広告宣伝費が動く可能性があるわけです。日本の1年間のテレビ出荷台数は1千万台ですが、パソコンと携帯電話は合計5千万台なので、お客様とのタッチポイントも圧倒的にネットが有利です。そのように広告メディアとしてのネットの価値が高まっていくと、否が応でもデジタルシフトが加速されるはずです。

――安藤さんは現場のお客様をサポートしている立場から、いかがですか?

安藤 デジタルシフトが進んでいると実感するのは、ネットバンクや格安スマホなど、店舗を持たない業態が増えてきている点です。ネットが主戦場になると、お客様の獲得・育成のアプローチもネットが中心にならざるを得ません。具体的には、DMP(注1)を構築して、どう最適化するかにチャレンジしている企業が増えています。このような最適化問題をICTで解決して欲しいというニーズがあると思っています。

高木 ネットの立ち位置としては、広告を見た人を流入させるまでが従来メディア、流入させてからがネットメディア、と役割分担しています。今は流入させた後、いかに最適化してターゲティングの精度を上げるかを考えていますが、従来テレビが担っていた役割をネットで担うようになると、今までのように狭いパイの中で高精度にやるだけでなく、パイ自体が広がる気がします。また、一人ひとりにターゲティングしていこうとすると、データドリブン(注2)に分割が最適化されるようになっていくと思います。現在のマーケティングが人に頼っている部分が機械に置き換わるのは時間の問題で、それに乗り遅れた所がITの武装に乗り遅れると思います。

ユーザー×ユーザーによるファン育成の仕掛け

――マーケティング用語では、「コミュニケーション戦略」「タッチポイントの増加」などと言われますが、最近では企業を信頼してもらうためにファンサイトを作ったりします。安藤さんが取り組んでいる格安スマホの企業の話をしていただけますか?

安藤 美紀
株式会社富士通総研
流通・生活サービス事業部
シニアマネジングコンサルタント

安藤 格安スマホの場合、すでにスマホを持っているユーザーにもう1回線契約してもらうのは無理がありますが、何もしなければ他社に離反してしまうかもしれません。A社様では、ユーザーになってくれた人をコミュニティサイトに誘導することで接点を確保しています。コミュニティサイトでは、既存ユーザーが使い方や利点を教えるサポート機能や、アイデアを出し合う機能を提供しています。ユーザー同士でサポートし合い、かつ新規ユーザーを呼び込むことで低コストを実現しているのですが、同時に「A社に貢献している」という意識がA社へのロイヤリティを高め、離反防止にも役立っていると考えられます。ただしコミュニティサイトの場合、コンバージョン(注3)といった概念がないため、将来的にはユーザーの状態に合わせて、「ファンになってもらうためのメッセージを出し分ける」ようになると思います。

高木 バイラルマーケティング(注4)は流行りませんでしたが、数学的には様々なことが見えます。どういうタイミングで誰に情報を送れば良いか、最適なタイミングを見つけて、そこから情報拡散させることをInfluence Maximization(影響最大化)と言います。そのためにはユーザー同士を掛け合わせる必要があって、大きな所は必ずファンサイト、ユーザーグループを作っています。その人たちがオーナーシップを持って、それを人手ではなく、Influence Maximizationのように、データや計算機の力を使って行うのは重要なテクニックですね。

――アメリカのメジャーリーグでは、スタジアムを借り切ってファンを集め、メジャーリーグの話をするイベントを行います。そこにイチローが突然現れたりすると、ツイートがツイートを呼んでどんどん拡散していく。それを読む人は「イチローってこういうことを考えるんだ」などマスメディアでは知ることができない情報を知ることができる。そうすると、今まで疎遠に思ったことが身近に感じられるようになり、もっと試合を見に行きたいと思うようになります。その結果、ここ20年、日本の球団収益が平行線なのに対し、メジャーリーグは数倍になっています。

高木 まさにバイラルマーケティングですね。ゲームも単体でやっているうちは決まったコンテンツ量の中でしか楽しめませんが、ネットで人と人とが対戦すると、遊びの世界が勝手に大きくなり、当初よりも遥かに大きなユーザー数を生み出します。このように、「ユーザーとユーザーを掛け合わせる」ことが必須だと思います。

コミュニケーション戦略におけるAI活用領域

――ユーザーとユーザーを掛け合わせる世界には、AIが入っていく可能性がある気がしますね。

高木 ネットの知恵袋などでは、自分の疑問に一番答えてほしい人に語りかける手段はありません。でも、質問内容とその人の過去の履歴をマッチングして「この人に聞いたら?」と提案することはできるはずです。それがAIなら可能だということです。SNSはユーザー同士のつながりのグラフが完璧に描けるので、それを利用して、ユーザー同士の掛け合わせをすることで、様々なアイデアが出てくると思います。例えばツイッターも喋るだけではなく、内容が熟成されていくと、「言った甲斐があった」と思えるのではないでしょうか。

――ツイッターなどのSNSとマシンラーニング(注5)とのギャップについてはいかがでしょう?

高木 ソーシャルデータをマーケティングに利用することは今後必須になっていきますが、何を取り出すかは千差万別です。例えば、ヒットさせたいキーワードを決めるにも、予測された率をもとに人が決めていますが、現在は数値レベルでしかつながっていません。人の行動意図まで迫ってターゲティングするとなると、単なる分類の機械学習ではなく、もっと高度なAIが必要になると思います。

SNSとDMPの連携

――行動意図を知るという意味では、富士通総研の生活者行動分析サービス(Do-Cube®)(注6)とDMPのセットで生活者を理解する提案が受けたりします。

安藤 企業はSNSの中から「商品を買った理由」や「買った後どうしているか」など、背景や実態だけを抜き取りたいと考えています。なぜなら、その内容がそのまま訴求ポイントになり、広告やランディングページになるからです。SNSから買った理由や使っている状態を抜き出すのはDo-Cubeの得意なところなのです。課題はDo-CubeとDMPの連携ができていない点です。

高木 その連携の部分は自動化されるべきだし、できると思います。最近の人工知能は計算型なので、「こういう言葉や意図が検出されたら、こういうふうに対応する」というように機械化できるはずです。SNSから大事なものを抜き出す部分は面倒ですが、そこができてしまえば後は楽です。

――Do-Cubeが得意としているところですね。

高木 SNSは抜き出すまでが大変ですが、人間の知的な部分を計算で置き換えることはやりやすい。その先を機械化するのが最終形だと思います。

――DMPの話はデータドリブンでできるところですが、SNSの世界は人間が読み解かないといけない部分だと思っていました。それが数値化できてつながれば、相当なことができると思います。

高木 例えば、AIプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」では、世界史の問題とか記述問題とかを解きます。まず説明があって、それに基づいて「あなたが思うことを述べよ」といった難しい問題です。すると前提部分を解釈して、関係ありそうな記事をコンピュータが探し、それらを融合して1つの答えにまとめます。この問題のここは前置き、ここは本題というのをコンピュータが認識し、問われているのは何かを段階的に処理し探しているのです。例えばSNSでは、「Aはイマイチだけど、Bは良かった」というように、物事の言いたいことはしばしば後半に現れます。この場合、前半も含めて単純に平均してしまうと、前置きの方が多くなってしまうのです。SNSの解釈も計算とはいえ人の感覚に近づいてきています。最後の最後は人に任せるものの、ある程度は機械がやってくれるところまで来ています。

[司会]
今村 健
株式会社富士通総研
執行役員 流通・生活サービス事業部 事業部長

――デジタルマーケティングの領域では、精度の高い個々人へのアプローチは今後もどんどん進んでいくはずです。一方で、生活者が監視されているような感覚に陥るようだと逆効果で、「生活者に寄り添う」という視点が不可欠です。夏休みになると書店に推薦図書が並びますが、「推薦図書はこれです」という宣伝は言えても、この本は何が優れているのか、なぜ推薦されているのかといったことを語れる書店は多くはありません。人は正しいことを知ることで書店に信頼を寄せ、知らなかったことに気がつくことで生活を豊かにします。そのように、生活者に寄り添う視点を持って取り組んでいきたいと考えています。本日はありがとうございました。

(注1)DMP(Data Management Platform):インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理・分析し、最終的に広告配信などのアクションプランの最適化を実現するためのプラットフォーム。
(注2)データドリブン:効果測定などで得られたデータをもとに、次のアクションを起こしていくこと。
(注3)コンバージョン:Webサイト上で獲得できる最終的な成果。広告や企業サイトの閲覧者が、会員登録や資料請求、商品購入など企業の望む行動を起こすこと。
(注4)バイラルマーケティング:商品やサービスを利用したユーザーが友人や同僚に紹介するように仕向けるインターネットを使ったプロモーション手法。
(注5)マシンラーニング:機械学習(machine learning)。人工知能における研究課題の1つで、人間が自然に行っている学習能力と同様の機能をコンピュータで実現しようとする技術・手法のこと。
(注6)Do-Cube:サンプリングされた世間を代表するブログから、生活者の声を素早く・簡単に把握するためのブログ検索サービス。

知創の杜(フォーカスシリーズ)デジタルマーケティング
「デジタルマーケティングのこれから」

当記事の詳細をPDFでご覧いただけます。

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