「ろう者に音を届けたい」(後編)
髪の毛で音を感じる全く新しいデバイス「Ontenna」

【未来を創るチカラ Vol.1】

海外や健聴者の反響も大きいOntenna

国内だけでなく、海外の展示会やメディア、TEDxHanedaなどのイベントにも積極的に出演し、Ontenna の魅力を発信している本多。世界からの注目度はますます高まっています。
「海外の方からも『COOLだね!』『早く使いたい』といった反響をたくさんいただいています。2020年までにすべてのろう者にOntennaを普及するというのを目標に動いていて、今はテストマーケティングの段階。ろう学校やろう団体、医療分野でも使っていただく予定ですし、高齢者や認知症の方の生活にも役立つのではないかと考えているところです」
また、興味深いのは健聴者からも「使いたい」という声が多く寄せられている点。例えば、イヤホンで音楽を聴きながらPC作業やランニングをしているときに背後からの呼びかけや車の存在にいち早く気づくことができるなど、Ontennaは健聴者の暮らしも変えうる可能性を持っています。

ろう者のスポーツ活動を支援したい

Ontennaの創りだす未来について、いきいきと語る本多。

現在、本多のもとには、様々な分野から「Ontennaとコラボレーションしたい」というオファーが届いているそうで、将来的には、音楽フェス、スポーツ観戦、映画館など、様々なシーンでの活用が見込まれています。
「特にスポーツの分野では、今後テクノロジーが一つのキーワードになると思うので、ぜひOntennaを活用していただきたいですね。ろう者の陸上選手がOntennaをつければ足を踏み出すリズムやタイミングがつかみやすくなって新たな記録が生まれるかもしれない。そんな未来を想像するとワクワクしますね」

使う人と"協働"すること、周りを巻き込む"情熱"を持つこと

ろう者の声に耳を傾け、積極的に人とつながることでプロダクトを進化させ、活用の可能性までをも広げてきた本多。Ontennaという新しい未来を生み出すことができた要因、それはいったい何でしょうか?
「使う人の立場に立ち、使う人と一緒にものを作り上げていく"協働"する姿勢と、周りを巻き込んでいく"情熱"でしょうか。どんなに革新的なアイデアがあっても、ひとりじゃ何も動きません。一緒に考え、手を動かしてくれる仲間や支援してくれる人たちがいたからこそ、ここまでこれたと思っています。また、開発のパートナーでもあるろう者の存在も非常に大きいです。健聴者にはない特別な感覚を持ったスペシャリストである彼らと一緒にものづくりを行うことで新しいイノベーションが起こせると思っていますし、それによって僕らの暮らしもよりよいものになっていったら嬉しいです」
ろう者に音を届けるだけでなく、健聴者にも新しい感覚や感動を与えてくれそうなOntenna。
障がいの有無に関わらず、誰もが快適に、心豊かに暮らせる未来を創るために―。本多の挑戦はこれからも続いていきます。

富士通株式会社
グローバルマーケティング本部
総合デザインセンター
本多達也
1990年 香川県生まれ。大学時代は手話通訳のボランティアや手話サークルの立ち上げ、NPOの設立などを経験。人間の身体や感覚の拡張をテーマに、ろう者と協働して新しい音知覚装置の研究を行う。2014年度未踏スーパークリエータ。第21回AMD Award 新人賞。現在は、富士通株式会社総合デザインセンターにてOntennaの開発に取り組む。