OpenStackの導入検討が日本でも加速!

【「OpenStack Days Tokyo 2016」取材レポート】

急速なビジネス展開にも迅速に対応することが成功の鍵を握る今、ICTにもより一層のスピードと柔軟性が求められています。高まる「ビジネスとICTの連携」に応えるインフラとして「OpenStack(注1)」が世界中で注目を集めています。
この状況の中、7月6日と7日、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催された「OpenStack Days Tokyo 2016」には、注目の高まりを反映し2500名を超える参加者が集まりました。

(注1)オープンソースで開発されているクラウド基盤構築用のソフトウェア。

OpenStack Daysとは

「OpenStack Days Tokyo 2016」は、OpenStack Foundation(注2)公認のコミュニティイベントで(日本OpenStackユーザー会が主催)、クラウド開発者とユーザーが集まる日本国内最大級のオープンクラウドイベントです。

今年のテーマは「10年先のプラットフォームへ」。企業やサービスプロバイダーがOpenStackを本番環境で導入している事例や、開発/運用技術者向けにノウハウ・性能検証結果、またOpenStackの新機能などが紹介されました。

富士通はプラチナスポンサーとして、自社で進める社内システムのクラウド導入の紹介や、技術者観点からの実践ノウハウなど数多くのセッションなどに参加しました。

(注2)OpenStack開発者とユーザーによる世界的なコミュニティ。2016年で、設立6年目を迎える。

基調講演

グローバルで5万人を超えるOpenStackユーザー。日本での導入検討企業も大幅に増加

初日の基調講演冒頭では、OpenStack Days Tokyo実行委員長の長谷川章博氏(ビットアイル・エクイニクス)が挨拶に立ち、「グローバルでのOpenStackメンバーは年々増加し、遂に5万4000名を超え、179カ国、600以上の企業がその活動をサポートしています」と、現況を紹介しました。また、事前の来場者アンケートからは、「OpenStackの導入予定なし」という回答が、昨年に比較すると48%から14%と大幅に減り、日本企業におけるOpenStack導入検討の高まりを示唆しました。

続いて、OpenStack Foundationの共同創設者でありCOOのマーク・コリアー氏が登壇し、「Community Contributor Awards(OpenStackコミュニティ貢献者賞)」の日本人受賞者を紹介。受賞者のうち、富士通からは酒井敦と加藤智之の2人には、“あらゆる場面で役立つ存在であった”という意味の「ダクトテープ賞」を贈り、活動への貢献を讃えました。

(左から)OpenStack Foundation共同創設者/COOマーク・コリアー氏、富士通のプラットフォームソフトウェア事業本部第二プラットフォームソフトウェア事業部 酒井敦、デジタルビジネスプラットフォーム事業本部ビジネス推進統括部 加藤智之

コリアー氏は、米国での調査結果を用いて、「企業の半数を超える65%が既にOpenStackを本番環境で使用しており、使用理由の97%が「プラットフォームの標準化」と答えた」と紹介。さらに、パブリッククラウドで利用されている数多くの事例を示し、「OpenStackはプライベートクラウドのイメージが強いが、世界中ではパブリッククラウドに使われているケースが多い」と述べました。

最後に、ディスラプション(破壊的変化)やIT環境の多様化、複雑化が進む中、これからの企業がビジネスで成功を収めるためには、「柔軟性」と「迅速性」を兼ね備えたITが必要と主張。多様なITを組合せ相互に運用できるOpenStackの有効性を示した上で、「Collaborate or Die(協調か死か)」という言葉を投げかけ、OpenStackが企業の「イノベーションエンジン」として進化していくと述べ、基調講演を終えました。

すべての社内システムをクラウドへ-富士通のOpenStack活用事例

企業でのクラウド活用といっても、現行のシステムで求められる信頼性や性能、セキュリティの維持は本当にできるのか。このような様々な懸念を抱いている人々に向けて、2日目に行われた基調講演では、OpenStackのエンタープライズ利用を進めるユーザー事例が紹介されました。エンタープライズ利用企業として、JEFスチール様、NTTドコモ様とともに、壇上に上がった富士通は、「すべてのシステムをクラウドへ」と題して、富士通のデジタルビジネスプラットフォーム事業本部長の太田雅浩が講演。OpenStackをなぜ導入したのか、どのように活用しているかなどのポイントや、実際の導入によって得たノウハウをご紹介しました。

太田は、お客様起点のクラウドサービスには「プラットフォームが継続的に成長すること」および「ベンダーロックインしないこと」が必要と主張。そのため「FUJITSU Cloud Service K5」にはOSS(注3)であるOpenStackを採用したと解説しました。そのうえで「K5には、サービスを止めないためのマルチAZ(注4)や、お客様が業務運用を計画できる情報公開性を追加していること」と説明。社内システムの実践で、「お客様の基幹系システムにも安心して使って頂けるパブリッククラウドになっている」と述べました。

[図]OpenStackとFUJITSUのポリシーを合わせた新たなクラウドへ

太田 雅浩富士通株式会社
デジタルビジネスプラットフォーム事業本部 本部長 太田 雅浩

(注3)OSS:Open Source Software (ソースプログラムが公開され、誰もが開発に参加可能なソフトウェア)
(注4)AZ:Availability Zone ( 障害から隔離するために作られたリージョン内の独立したエリアまたはロケーション)

セッション

日本人唯一のOpenStack Foundation Boardメンバーとして

金重 憲治 富士通株式会社 プラットフォームソフトウェア事業本部
Linux開発統括部 部長 金重 憲治

OpenStack Foundationには、24名のBoard Of Directorがおり、Foundationの戦略的および、財政的な方針を監督しています。そのメンバーの中で、唯一の日本人Boardとして活動している富士通の金重憲治が登壇したパネルディスカッションでは、「OpenStack Foundationでは何をしているのか」をテーマに、日本のゴールドメンバー企業として参加している3名のキーマンが議論を交わしました。
金重は、自社でもOpenStackを導入し社内システムのクラウド移行を推進している企業の観点から活動内容の取り組みを紹介し、ゴールドメンバー企業からの、また日本代表のBoardとして、自社のみならず、日本やAPACの開発者が活動しやすい環境を実現できるよう、議論を重ねていることを紹介しました。また、日本の開発者がより発言権を得るためにも、ゴールドメンバーに多くの日本企業が参加するよう奨励しました。

社内実践で培った知見を組み込んだOpenStackベースの富士通クラウドサービス

森田 真由子 富士通株式会社 プラットフォームソフトウェア事業本部 第一プラットフォームソフトウェア事業部 部長 森田 真由子

お客様のデジタル革新への取り組みの重要度が増す中で、富士通はクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」とオンプレミスクラウドプロダクト「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for Cloud」には、クラウド基盤の共通技術としてOpenStackを採用しています。富士通が、OpenStackを活用して高可用・高信頼なクラウド基盤をどのような技術で実現し、実践で得た知見をどのようにOpenStackコミュニティに還元しているのかについて富士通の森田真由子より紹介しました。

[図]OpenStackコミュニティ活動へのインプット

OpenStackを活用する富士通の取り組み 講演資料をご希望の方はこちらへ

技術者向け実践ノウハウ

OpenStackの導入・運用に関わる技術や富士通が培ってきた実践ノウハウなどを技術者向けセッションや展示にてご紹介しました。

【セッション】OpenStack実運用者の視点から解説

開発や運用に携わる技術者向けセッションでは、「OpsMeetupの紹介と運用者が語る“Day 2 Operation”」をテーマに、日々OpenStack環境の運用を行っている実運用者の視点から、監視、トラブル対応ノウハウ、アップグレード、便利ツールなどを紹介しました。その他にも、「Newtonでのベアメタルは何が違うのか、開発内容の紹介と、VMとの機能面のギャップ」をテーマに、現状のOpenStackにおけるベアメタルサーバと仮想マシンとの間の機能面でのギャップと、それらを埋めていく取り組みについて解説。オペレータと開発者の観点から良くなった点を苦労話も交えご紹介しました。

<主催者企画セッション>
「集え!OpenStack運用者 - OpsMeetupの紹介と運用者が語る“Day 2 Operation”」
[講師]富士通株式会社 プラットフォームソフトウェア事業本部 第二プラットフォームソフトウェア事業部 マネージャー 中田 慶

<主催者企画セッション>
「Newtonでのベアメタルは何が違う?~開発内容の紹介と、VMとの機能面のギャップについて~」
[講師]富士通株式会社 プラットフォームソフトウェア事業本部 Linux開発統括部 古川 勇志郎、椎名 宏徳

Newtonでのベアメタルは何が違う? ~開発内容の紹介と、VMとの機能面のギャップについて~ 講演資料をご希望の方はこちらへ

【展示ブース】OpenStack環境の安定稼働を支援する先進技術

富士通の展示ブースでは、OpenStack環境での安定稼働をテーマに、各種管理ソフトを中心に紹介しました。富士通メンバーも積極的に開発に参加しているManasca(注5)を採用したリソース全体を可視化する技術は、仮想マシンのCPU・ディスクの使用量やメモリ空き容量の変化をリアルタイムに見ることができるため、リソースの過不足も早期に発見できます。この技術は2015年度から海外出荷を始めており、日本国内には2016年度後半に発売する予定です。その他にも、ソフトウェア配付をサービスとしてすぐに開始できたり、サーバ故障時に仮想マシンを自動立ち上げし業務継続を可能にするなど、運用管理を支えるソリューションをご紹介しました。

また、OpenStack技術を採用したクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」と、社内実践において培った運用をプライベートクラウド環境にてご提供する「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for Cloud」をあわせて出展しました。

(注5)Monasca:OpenStackシステムの監視機能をサービス(Monitoring as a Service)として提供するモジュール。不特定多数のユーザーが、自分の監視したい測定項目を定義し、自分の好きなタイミングでGUIまたはAPIでチェックできるようにする機能を持つ。

まとめ

講演会場、展示会場ともに多くの参加者でにぎわっていた、今回の「OpenStack Days Tokyo 2016」。多くの参加者が熱心に説明員に質問したり、交流している様子があちこちで見られ、OpenStack導入への高まりを改めて実感することができました。

富士通は、これからもOpenStack Foundationのゴールドメンバーとして、自社導入で培った知見をふまえ、エコシステムの中核を担うOpenStackの発展に向け取り組んでいきます。