ICTの力で「今ある強み」に新しい価値を ~オラクルと富士通が切り拓くデジタル革新~

【富士通フォーラム2016 カンファレンスレポート】

東京・有楽町にある東京国際フォーラムで、2016年5月19日と20日の2日間にわたり開催した「富士通フォーラム 2016」。19日には「ICTの力で『今ある強み』に新しい価値を‐オラクルと富士通が切り拓くデジタル革新‐」と題するカンファレンスを開催しました。カンファレンスは2部構成で、前半は富士通の執行役員常務・松本端午と、日本オラクル株式会社の取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原博茂氏の講演、後半はお客様、パートナー様交えパネルディスカッションが行われました。

さらに加速するデジタル革新、先進事例を紹介

最初に登壇した富士通の松本は、「ビジネスや社会の中核的なプロセスにデジタル技術を取り入れることで、非常に大きな変革がもたらされ、今やそれが実行フェーズに移ってきている」と前置きし、そうした中からデジタル革新の事例として「新ビジネスの創出」「マーケティングの高度化」「ユーザー・エクスペリエンスの向上」の3つを紹介しました。

「新ビジネスの創出」では、株式会社レオパレス21様の事例を紹介。同社が管理運営する全国の賃貸住宅の屋根に太陽光発電システムを設置し、富士通のクラウドとIoTを活用した監視サービスを組み合わせて、クリーンな電力と新たな収益を生み出す「屋根借り太陽光発電事業(ルーフメガソーラープロジェクト)」という新たなビジネスモデルを実現しました。現在、発電設備の設置数は4500棟にも増大しています。

「マーケティングの高度化」では、株式会社日経BP様の事例を紹介。同社には、専門誌の購読申込時やデジタルメディアの会員登録時、セミナー受付時に取得した利用価値の高いデータが膨大に存在していました。しかし、それらを別々のシステムで管理していたため、せっかく膨大なデータがあるのに、精度の高い見込み客リストを短期間で作成することが困難でした。そこで別々に管理していた顧客リストを統合し、個人の行動履歴に合わせた案内の送付を可能にしました。これにより、専門誌の購読案内で従来比2倍の申し込みを獲得しました。

「ユーザー・エクスペリエンスの向上」では、神奈川県川崎市様の事例を紹介。同市と富士通は協働により、オープンデータを活用する新しい情報発信の仕組みとして、子育て支援アプリ「あさお子育てポータル」の実証実験を行いました。これは、おむつを替えられる施設や子育て関連のイベントなど、子育てに役立つ情報をスマートフォンの地図アプリと組み合わせて提供するというものです。実証実験の結果、0歳児を持つ方の9割以上に支持をいただき、この4月からは防災情報とともに「かわさきアプリ」としてサービスを開始しています。サービスには位置情報クラウドサービス「SPATIOWL(スペーシオウル)」(※注釈)を活用しました。

※SPATIOWL(スペーシオウル)
人や施設の情報、センサー情報、インターネット情報などから収集される大量の位置情報を活用し、新たな価値を提供するサービスです。

松本は、富士通がお客様と進めているPoC/PoB案件の上位8分野として「顧客分析・マーケティング」「交通情報・災害対策」「商品のトレーサビリティ」「工場の見える化」「人の見守り(高齢者/子供等)」「農業・畜産の高度化」「設備の監視・保全」「店舗顧客の動線分析」を挙げました。こうした分野で、クラウド、モバイル、ビッグデータ、IoT、AIなどの最先端のICT技術を活用しデジタル革新が進んでいる一方で、市場データを示しながら、デジタル革新がうまく進んでいないというお客様の声が少なからず聞こえてくることを語りました。その課題として、『時間・費用』『人材・スキル』『既存システム連携』の3つを指摘し、パネルディスカッションへ繋ぎました。

クラウドカンパニーへ大きく舵を切ったオラクル

続いて登壇した日本オラクルの杉原氏は講演の冒頭、「オラクルは2年前に『クラウドでNo.1の、社会に貢献するカンパニーへ』」というビジョンを語りました。「データベースのオラクルからクラウドのオラクルになる」と述べ、続けてオラクルのスローガン「POCO(ポコ)」を紹介しました。

POCOは「The Power of Cloud by Oracle」の略で、Agility、TCO、Ease of Use、安心、安全を実現するという考え方です。このスローガンのもと、「オラクルではグローバルで、SaaSとPaaSの2015年第3四半期の売上が前年同期比で161%、SaaSの顧客数1万1000社以上、PaaSの顧客数5000社、また日本オラクルではSaaSとPaaSの売上が前年同期比で153%、SaaSとPaaSの新規受注が約10倍と大きく拡大しています」と力強く述べ、クラウドへの注力が効果を発揮していることを説明しました。

また、POCOの特徴のひとつとして「Oracle Cloud Software as a Service」のカバレッジの広さについて紹介。杉原氏は「たとえば、マーケティング、セールス、eコマース、サービス、CPQ(構成、価格設定、見積)、ソーシャルは『CXクラウド』でカバーし、グローバル人事、組織管理、タレントマネジメント、報酬管理は『HCMクラウド』でカバーできます。さらに、財務管理、プロジェクトポートフォリオ、調達管理、EPM、財務レポート、製造、資産管理、バリューチェーン実行、プロダクトバリューチェーン、バリューチェーンプランニングは『ERP/EPMクラウド』でカバーできます」と述べました。

そして今後の方向性として「コスト、信頼性、性能、セキュリティ、互換性、業界標準の6つをゴールにミッションクリティカルなクラウドを目指す」と示しました。続けて、オラクルと富士通の30年以上の関係に触れました。両社はずっとミッションクリティカルな領域で協業しており、特に最近注目されているセキュリティについても得意分野であること、また、チップからハードウェアまでものづくりの会社としてクラウドを提供することができると紹介しました。

両社の関係は今も世界中を舞台に続いており、日本では年間6000件以上のプロジェクトを一緒に進めているといいます。「これまでも一緒に歩んできました。これからも一緒に日本をサステナブルな社会にしていきたい」と述べ、講演を締めくくりました。

デジタル革新実現への課題とは

講演の後は、オプテックス株式会社のR&D戦略部の部長・中村明彦氏、日本オラクル株式会社の執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド統括本部長・首藤聡一郎氏、同じくクラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長・竹爪慎治氏、富士通研究所の取締役・佐川千世己をパネラーに迎え、パネルディスカッションを開催しました。モデレータは富士通の執行役員常務・松本端午が務めました。

松本は、最初の講演で提起したデジタル革新の実現に向けた3つの課題「時間・費用」「人材・スキル」「既存システム連携」を軸にディスカッションを進めました。

「時間・費用」では、まず、中村氏が「オプテックスはセンシングデバイスメーカーで、防犯や自動ドア用のセンサーにおいて世界的にも高いシェアがある。新たに富士通と水質検査の領域での事業をご一緒させていただいたが、これまで当社だけでは、お客様に提供できる価値としてセンサーのハードウェアしかなかった。付加価値をつけたサービスとして提供するには、ハードウェア開発とは別に、膨大な時間と費用がかかり、メーカーだけではサービス提供は困難という課題を持っていた」と説明。今回、富士通のIoT Platformを活用することで、センサーにデータ収集という付加価値をつけサービス提供できるようになり、「時間・費用の抑制を実現できた」と語りました。

竹爪氏は、オラクルの「Oracle Cloud Platform」を活用したバーガーキングの事例を紹介。ブラジル財務省から直接税の電子請求処理の要望を受けた際に、「Oracle Cloud Platform」の活用で、わずか3日、実稼働28時間で運用を開始したほか、60%の人員削減、50%のTCO削減を実現したと説明しました。

一方、佐川は富士通の社内実践を紹介。グループの国内外すべての社内システムである約640システム、1万3000台のサーバを次世代クラウド基盤へ移行する取り組みを進めており、5年間で約350億円のTCO削減を見込んでいます。「その過程で培った開発ノウハウなどをリファレンスとしてまとめて、お客様に提供しています」と語りました。

デジタルビジネス・プラットフォームが重要

次の課題である「人材・スキル」について、首藤氏はオムニチャネル戦略へシフトしたMacy'sの事例を紹介しました。158年の歴史を持つ老舗企業である同社は、全国に870の店舗があり、雇用・再雇用の総人数は20万人にのぼっていました。そこで、顧客経験価値の最大化、業務プロセスの標準化による生産性の向上、オムニチャネル戦略を遂行する人材の確保・育成を目指して取り組みを行いました。

その結果、業務プロセスを2000から200以下に抑え、ビジネスリーダーへ人材情報を開示し実業務の改善に活用、人事関連作業の40~60%をデジタル化しました。人材とスキルは、従業員の頭の中にある「暗黙知」をデータ化、デジタル化し、経営資源として活用できるようにしました。これにより研修の期間を短縮して、より早く現場に出られるようになったと言います。

「既存システム連携」では、竹爪氏が「顧客情報のシステムに連携させることが重要」と指摘。続けて「デジタル革新は時間との戦いで、今あるものを素早く組み合わせることが求められます」と述べました。

モデレータを務めた松本はまとめとして、「デジタル革新という新しいチャレンジをしていく中で、変化への対応は時間とコストという概念で見るということが非常に大事なこと。特に時間はまさに取り返しのつかないことであるから、変化に柔軟に対応できる、解決策が備わったプラットフォームを活用することが、ひとつの解決法と考えている。そのプラットフォームの上に、お客様が独自の価値を提供できる仕組みを、一緒に作っていくことが富士通の役割であると考えている。

また、人材に関しては、IT人材という閉じたことだけでなく、広くすべての人材を新しい世界にトランスフォームするときに、プロセスも見ていく必要がある。そして、たとえ企業向けのサービスを提供している会社であっても、その先のコンシューマーを意識してCX、UXも提供すべき時代になっている。その価値をどう評価して保証していくのかは、お客様と一緒に考えていく必要がある。その上で人材をどう定義していくかは非常に大事なるし、それは時代によって変わっていく。それを実現していくために人の活動を補足するような仕組みが必要になる。

そして既存システムとの連携は、私たち共通の課題であると思う。基本的なデータの同期はプロセスを保証する原点であるし、それを利用者の視点で考えていくことで優先順位が見えてくる。今後もお客様のビジネスパートナーとして一緒にいいものを作って行ければと思う。最後にICTサービスを提供する者として、皆さんと力を合わせていく必要があると考えている。デジタル革新は怖い面もあるが、社会や人間の生活に有意義であること、そこに求められるのは信頼性と公正さである。」と述べ、パネルディスカッションを締めくくりました。

<講演者>
  • 富士通株式会社
    執行役員常務
    松本 端午

  • 日本オラクル株式会社
    取締役 代表執行役社長 兼 CEO 杉原 博茂 氏

<パネルディスカッション>
  • オプテックス株式会社
    R&D戦略部 部長 中村 明彦 氏

  • 日本オラクル株式会社
    執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド統括本部 本部長 首藤 聡一郎 氏

  • 日本オラクル株式会社
    クラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長 竹爪 慎治 氏

  • 株式会社富士通研究所
    取締役 佐川 千世己

[モデレータ]
  • 富士通株式会社
    執行役員常務 松本 端午