先手必勝! IoTからはじめるデジタライゼーション~すべてが「つながる」時代の構造変化と商機~

【富士通フォーラム2016 イベントレポート】

東京・有楽町にある東京国際フォーラムで、2016年5月19日と20日の2日間にわたり開催された「富士通フォーラム 2016」。20日のカンファレンスでは、「先手必勝! IoTからはじめるデジタライゼーション~すべてが『つながる』時代の構造変化と商機~」と題し、IoTが社会やビジネスの世界にもたらすイノベーションやセンシングデータを活用することで、新たな価値を生み出すことに成功した事例などを紹介しました。

グローバルにおける「国のデジタル化」のトレンド

「情報化時代はもう過去のもの。これからはデジタル化時代が到来します」と、ネットワーク機器などをグローバルで提供しているシスコシステムズCountry Digitization事業統括のガイ・ディードリッチ氏は切り出しました。
「これから先の 20年間は、人間も、生活に関わるものも、すべてがネットワークでつながる時代となります。それは単にやり取りされるデータ量が膨大に増え、つながり、意思決定を促すことを意味するだけではありません。将来の子どもたちは、私たちとは全く違う生活の仕方、想像を超える生活の仕方を経験することになります。その時にポイントとなるのがデジタル化です」とディードリッチ氏は言います。

デジタル化を推進していくためには、研究開発、教育、新規事業に加え、国家レベルのインフラが必要です。「デジタル化をどう進めるかという国の課題は、企業にも当てはまります。」とし、「何故ならば、10年以内に40%以上の企業はなくなると予測されているからです」と問題を投げかけました。

ディードリッチ氏は「デジタル化した世界では、新しいビジネスモデルが常にどんどんと出てきます」と切り出し、例として、タクシー配車を行うUber社や、ホスピタル産業のAirbnb社はテクノロジ企業であると述べました。「将来の大企業は、CEOとCIOだけで、他の社員はいないということも有り得るかもしれません。こういった新しいビジネスモデルによって色々なことが破壊されて、不連続性が出る、そのための準備、戦略を持つ必要があります」

IoTは、今までになかったチャンスをもたらすと言われています。「19兆ドルのチャンスがこれから10年間に創出されます。500億個のモノを接続することによって、これだけの価値が出てくる。どんな業界でも全く今までと違う形で、不連続性、破壊がもたらされます」とディードリッチ氏は述べます。

「2015年より先、こうした分岐点がバラバラと出てきて、私たちの周りはガラガラと変わっていきます。つまり、今対策をしないと、飛躍的な成長は有り得ないわけです。成長する側としない側、このどちらの側に皆さんはいたいのか。国としてどちらの側にいたいのかを、よく考えなければなりません」と問題提議する形で、講演を終えました。

ヒューマンセントリックIoTでお客様ビジネスを共創

続いて壇上に立った富士通 執行役員専務の香川進吾は、「ヒューマンセントリックIoTによって、お客様と共創し、共に新しい価値を作っていきたい」というメッセージから講演を始めました。

「これまで企業は、商品の価値や位置づけを定義して消費者にアピールしてきました。これからは、商品が消費者にどのように使われ、どのように評価され、どのように定義されているかという点を理解しないと、マーケットから退場させられる時代になります」と説明。「スマートデバイスの普及に伴い、世界中の情報をリアルタイムに入手したり、発信できるようになった今、これまでのような消費者との関係作りでは間に合いません。リアルタイムに消費者の考えを理解できなければ、ミスマッチになる。だからデジタルイノベーションとIoTが必要とされているのです。IoTは、人と人、人とモノ、モノとモノをつなぎ、商品がどのように活用されているか、評価されているかを、瞬時に把握できます」と、デジタルイノベーションにおけるIoTの必要性を強調しました。

富士通がお客様に求められていることは、デジタルイノベーションを起こしてシステムの最適化を行い、さらにそのシステムから生み出される商品やサービス、そして新たな価値、新たな感動を揺り動かす体験の提供です。香川は、「富士通はお客様、そしてお客様のお客様である消費者に対する価値を作っていかなければいけません。そのために『MetaArc(メタアーク)』があります」と、富士通が2015年に発表したデジタルビジネス・プラットフォームを紹介しました。

香川は「ネットワーク、IoT、セキュリティ等で、人、モノ、情報を安全につなげる。そこから、いろいろなデータを集め、ビッグデータ等で分析、解析し、AIで価値に変える。そしてまた、セキュリティ、IoT、ネットワークを駆使して制御しフィードバックする。この利用者価値を最大化するサイクルをあらゆる分野で実現できるのが、富士通の強みです」とし、講演を締めくくりました。

持続可能な地域公共交通事業をめざして

高知県でバス事業を展開している、とさでん交通 代表取締役社長の 片岡万知雄氏は、持続可能な地域公共交通を目指す取り組みとして、富士通が開発したバスロケーションサービスを紹介しました。

人口減少や自家用車の普及によって、地方のバス事業の9割が赤字と言われています。また、利用者から見ると「路線が複雑で行き先が分かりにくい」「バス停の通過時間が不確定」などの不便さが利用を阻んでいます。

そこで、とさでん交通様が取り組んだのは、スマートフォンを活用したバスロケーションサービスによる利便性向上でした。スマートフォンアプリである「バスこっち」を使うと、利用者は「バス停の位置」「目的地に向かう路線のバスの位置」「バスの接近情報や遅延情報」などを、スマートフォンで手軽に入手できます。

一方、バス会社にとっても、路線ごとに利用者数や運行状況がデータで「見える化」されるというメリットがあります。「これまでの経験と勘に頼った施策からデータの見える化によって、路線再編や利用者へのサービス向上が可能になりました。これまでは長年の経験と勘に頼った施策を打ってきました。しかしこのサービスがあれば、自治体などの関係者と赤字路線をどうするべきか議論する時などに、全員が同じ問題意識を持って対策を考えることができます」と片岡氏は語りました。

このバスロケーションサービスは、富士通の位置情報サービス「SPATIOWL(スペーシオウル)」をベースにしたものです。それぞれのバスに専用機ではなくスマートフォンを設置し位置情報をクラウドに収集、バス停への接近情報などを利用者のスマートフォンに配信します。

片岡氏は、「とさでん交通は、このような経営戦略のもと、黒字化を果たし、持続可能な公共交通の実現を目指しています。また、路線バス事業の方向性を示し、利用者の利便性の向上に取り組んでいきます」とまとめました。

「IoT×スポーツ」で切り開く来場者サービスから広がるドラマ

最後に登壇したのは、Jリーグ川崎フロンターレ代表取締役社長の藁科義弘です。川崎フロンターレは、サッカースタジアムにおけるIoTの活用を進めています。ホームスタジアムではJリーグ初のWi-Fiサービスを提供し、サッカーに関する様々なコンテンツを来場者のスマートフォンに届けています。

そのような中、富士通とのコラボレーションによって実現したのが、IoTを活用した来場者参加型サービスの実証実験です。あらかじめスマートフォンに専用アプリをインストールした利用者がスタジアムに到着すると、自動的にビーコンが検知しサービスを開始。試合開始前やハーフタイムになるとゲームが自動的に届き、来場者が競い合ってゲームを楽しむことができます。そして設定した時刻になると自動的に終了します。

「つながった、情報が集まった、それを分析し新しい価値を生み出す。こういうサイクルを展開することが大切です。川崎フロンターレは、単なるスタジアムにおける集客から、IoTを活用したビジネス展開を目指していきます」と、藁科は抱負を語り、講演を終えました。

登壇者
  • シスコシステムズ
    Country Digitization事業統括 ガイ・ディードリッチ氏

  • 富士通株式会社
    執行役員専務 香川 進吾

  • とさでん交通株式会社
    代表取締役社長 片岡 万知雄氏

  • 株式会社川崎フロンターレ
    代表取締役社長 藁科 義弘氏

IoTを活用した数多くの利用シーンを体感!

展示会場では、来場したお客様に入口でセンサービーコンを配布し、実際の会場の混雑状態をリアルタイムでモニター上に可視化する「インドアロケーション」をはじめ、ユビキタスウェア、ものづくりや農作業などの現場でのIoTの活用例など、お客様のIoTビジネスにお役立ていただけるソリューションをご提案し、体感いただきました。

インドアロケーション

会場の入口には、会場の今の混雑状況が一目で把握できるモニターが設置されていました。これは、位置情報サービス「SPATIOWL」で提供される人やモノの位置情報とビッグデータを活用した「インドアロケーション」サービスです。入口で配布したビーコンとお客様の事前登録情報をリンクさせることで、当日は実際に海外のお客様の行動を把握し、外国語ができるスタッフを現場に配置するといったサービスも行っていました。

来場者にはセンサービーコン(写真左)を配布し、会場の混雑状況をリアルタイムで表示(写真右)

インテリジェント・ダッシュボード

センシング技術の進化により、これまで取得できなかった工場の様々なデータを組み合わせることで最適な工場マネジメントを実践する「インテリジェント・ダッシュボード」の紹介です。人間とAI(デジタルアシスタントのAnna)との対話を通じて、工場で発生したトラブルが、状況把握~原因~解決と段階をふんで解決していくプロセスに、来場者の高い関心が集まっていました。

人が話しかけると、AIのエージェント「Anna(アンナ)」が過去のデータを分析し、最適と思われる回答を音声で返答。工場内のトラブル解決に導きます。(右下がAnna)

FUJITSU Cloud Service IoT Platform

ダイナミックリソースコントローラーが状況に応じて、処理するデータ量を調整しながら、リアルタイムかつ効率的にデータを処理

富士通のビジネス・プラットフォーム「MetaArc(メタアーク)」を構成する商品の一つです。IoTに必要な機能がクラウドサービスとして準備されているため、お客様は自ら開発することなく利用でき、短期間にコストを抑えて、IoTを活用したビジネスを開発できます。特長的な機能であるダイナミックリソースコントローラーを利用すれば、クラウドに集約された膨大なセンシングデータを、現場の変化に柔軟に対応しながら安定かつリアルタイムに処理することが可能です。展示では、カメラ映像の負荷に応じて処理を変えるデモを行っていました。テーマパークの監視や天災の予兆監視などでの活用が期待できます。

ユビキタスウェア

「ユビキタスウェア」は、センシングしたデータを、富士通独自アルゴリズムであるヒューマンセントリックエンジンを活用して分析し、例えば、転倒検知や身体姿勢状態検知などお客様がすぐに活用できるデータに変換して提供します。お客様の既存機器・システムに簡単に組み込み可能であるほか、「ユビキタスウェア」組み込みデバイスとして製品を提供することで、お客様はスピーディーに導入が可能です。

バイタルセンシングバンド

バイタルセンシングバンド(手首部分)を付けたマネキンの展示

人の状態、環境、位置を遠隔から把握できるのが「バイタルセンシングバンド」です。熱ストレスによる体調不良や、危険区域への立ち入りを通知し、安全に働ける職場・生活環境づくりに貢献します。

ロケーションバッジ/タグ

作業者や什器の現在位置を検出し、移動経路を軌跡として記録します。高精度な位置情報をリアルタイムに把握したり、加速度や位置情報の蓄積から個体ごとの導線を分析し、人の滞りの「見える化」や導線の最適化などに活用できます。

ロケーションバッジ(写真左・胸の部分)を身につけることで、人や物の導線を把握(写真右)

リモートケアベース

生活音(発声、咳。いびきなど)や人の動きから、居住者の生活状態の変化を分析するサービスです。増え続ける独居高齢者の遠隔からの見守りが可能になるほか、住宅そのものの価値向上につながります。

リモートケアベース

緊急ボタンが押された時の管理画面のデモ

わんダント2

「わんダント2」の展示

富士通独自の犬専用動作解析アルゴリズムにより、外出時の愛犬の見守りや健康管理ができます。同時に、「わんダントチャーム」を装着した愛犬を飼う高齢者の見守りも行うことができます。