東京23区の警備計画を5分で完成!「ゲーム理論」を使ったAI技術とは?

人出が多い場所で欠かせない警備対策

スポーツ、コンサート、遊園地......休日には、たくさんの人が集まるイベントが全国各地で開催されます。ある調査によると、2016年ゴールデンウィークの人気旅行先ランキングの1位は広島県。厳島神社、原爆ドームなどの人気スポットを有しており、毎年160万人以上の人出となっています。以下、2位が宮城県、3位が福岡県となっており、各地で観光客で賑わいをみせました(注1)。

不特定多数の人が集まるイベントにおいて、雑踏警備・イベント警備など、セキュリティ対策は欠かせません。しかし、犯罪者の侵入経路や逃走経路を完全に監視することは、限られた警備資源の中では不可能に近いものがあります。このため、警備員を効果的に配置し、被害を最小限に食い止めることが求められますが、これらの警備計画は専門家の経験とカンに委ねられているのが実情です。そのため、近年では人工知能(AI)を活用した警備計画の立案が注目されています。

(注1)楽天トラベル調査。http://travel.rakuten.co.jp/ranking/special/gw/

「ゲーム理論」で限られた警備資源を効果的に配置

このたび、富士通研究所と電気通信大学では、AIを活用し、犯罪者の行動特性や心理特性を考慮した上で、限られた警備資源を効果的に配置する技術を開発しました。これは、近年AI分野でも高い注目を浴びている数学理論の一つである「ゲーム理論」(注2)を活用したものです。犯罪者側と警備側を「対立する意思決定者」と捉えた技術は、「警備ゲーム」と呼ばれます。富士通研究所は、警備ゲームの問題の一つである都市道路ネットワーク警備問題において、大規模な道路ネットワークにおける警備計画を高速に解く技術を開発。電気通信大学と共同で、この技術に関する理論的な裏付けを行いました。

都市道路ネットワーク警備問題は、目的地に向かう犯罪者や逃走しようとする犯罪者を捕捉するために、限られた数の検問所をネットワーク上に配置する問題です。犯罪者側と警備側の全ての行動パターンを考慮して、互いにその中で最善を尽くした結果を求める必要がありますが、ネットワークが大きくなると両者の行動パターンの数が爆発的に増えて計算が困難になってしまいます。

開発技術では、検問所の配置を特定の候補箇所に限定することで警備側の行動パターンの数を削減。さらに、候補箇所の通り方だけに着目することで、犯罪者側の行動パターンの数も大幅に削減します。このネットワーク縮約の技術を用いると、問題の計算量を大幅に削減することができます。また、追加すべき候補箇所を自動的に選んで解を改善していくアルゴリズムも開発しました。これにより、3万通りの擬似的な道路ネットワークを使ったシミュレーションで、99%以上の問題に対して最適な解を見つけられることを確認しました。

(注2)利害の対立する事態にある集団の行動を数学的にとらえる理論。ゲームにおけるプレーヤーの行動様式をモデルにしたもので、経済現象の分析や軍事的シミュレーションなどに応用される。

ネットワーク縮約による計算量の削減

東京23区の警備計画を、わずか5分で完成

この技術により、従来手法と比較して、100ノード(交差点)では平均20倍、200ノードでは平均500倍の速度で最適な警備計画を見つけることができ、10万ノード規模の道路ネットワークの場合でも、数分で解を得ることができます。東京23区を含む20万ノードの道路ネットワークに50箇所の検問所を配置するシミュレーションでは、一般的なPCを使ってわずか5分で警備計画を導出することが可能になります。

これにより、警備計画を立案する専門家への対話的な支援が可能になります。AIの力により、人々のより安心安全な社会生活に近づくことができるのです。富士通研究所は、この技術を、富士通のAI技術「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」の1つとして、2017年度中に実用化すること目指します。