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国産旅客機MRJを世界の空へ

【富士通フォーラム2016 特別講演レポート】

東京・有楽町にある東京国際フォーラムで、2016年5月19日と20日の2日間にわたり開催した「富士通フォーラム 2016」。20日には、国産のリージョナルジェット機「MRJ」を開発した米国三菱航空機の岩佐一志氏に、MRJ開発の経緯や狙い、国内の航空機産業確立に向けた取り組みなどについて講演していただきました。

約半世紀ぶりの国産旅客機「MRJ」

講演の冒頭、岩佐氏は日本の航空機産業について紹介しました。「産業規模は2013年で1.7兆円と、米国の15分の1です。国内の産業別出荷額で比較すると、自動車の30分の1以下。華やかな割に産業規模としては大きくない航空機産業ですが、決して技術力が低いわけではなく、例えばボーイング787では機体の3分の1以上の部品を日本企業が担当するなど、大きな貢献をしています」と現状を解説しました。

岩佐氏は、日本の航空機産業が転換点を迎えていると指摘。「これまでは、ボーイングやエアバスなど海外メーカーの一次下請けとして事業を拡大してきましたが、低賃金の新興国が力を付けてきたことで、下請けだけでは日本の航空機産業の成長は難しいという現状が見えてきました」と語ります。それが、実に半世紀ぶりとなる国産の「Regional Jet(リージョナルジェット)」の開発へと結びついていったのです。

今回の講演テーマであるMRJは、「Mitsubishi Regional Jet」の略です。「Regional Jet」、つまり「地域を結ぶ小型の国産ジェット旅客機」として注目されています。

地域間のエアラインと十分な航続性能

それでは、MRJの特徴や強みは何でしょうか。現在開発されているのは、客席が88席の「MRJ90」と、客席が78席の「MRJ70」の2機種です。民間航空機は座席数の多い順に「Wide Body」「Narrow Body」「Regional Jet」に分けられ、MRJは座席数が100席以下のRegional Jetに分類されます。

岩佐氏は、「世界の旅客機数は今後20年で2倍に、リージョナルは3倍に成長し、4,000から5,000機という大きなマーケットになると見込まれる」と言います。すでにカナダ、ブラジル、中国、ロシアのメーカーが市場参入しており、将来はこれら4カ国との競争になるとのことです。

地域の中の拠点を結ぶMRJですが、その航続距離が気になるところです。岩佐氏は、「MRJの航続距離は3,500~3,700km。例えば北米の場合、デンバーから飛ぶと北米ほぼ全ての都市に行けます。アジアでは香港を出発した場合、北はモンゴルのウランバートル、そして北京、韓国、大阪、フィリピン、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイまで行ける。この飛行円の中に10数億人、世界の人口の4分の1がいることになります」と、地域の中を結ぶには十分な性能を持っていると強調しました。

海外マーケットでも十分な競争力

岩佐氏は、MRJのセールスポイントとして、「環境・乗客・エアラインに新しい価値を提供する」ことを挙げました。優れた空力性能により燃費性能が向上したほか、同クラスの機体より40%以上騒音エリアを低減し、20%以上CO2排出を削減。排ガスは国際基準が要求する規定の半分以下に抑えるなど、「静かで環境に優しい機体を実現しています」と紹介しました。

MRJは、製造面での品質の高さも海外からも非常に高い評価を受けています。このような燃費性能、環境性能、客室快適性に加え、後発メーカーであるという強みにより、「競合関係にある海外メーカーとマーケットの中で十分に戦っていける」という見通しであることを岩佐氏は述べました。

米国三菱航空機 岩佐一志氏

「オールジャパン体制」で進む開発

MRJプロジェクトは、設計、開発から販売、アフターサービスまでサポートする三菱航空機様、製造を手がける三菱重工業様、各部品などを製造するパートナー各社様に、株主や政府機関、輸出関連機関などを加えた「オールジャパン体制」で展開されています。

開発の状況について岩佐氏は「初飛行が成功した1号機に続いて、2号機が近々に初飛行の予定です。3号機も地上試験の最中で、初飛行に向けて準備を進めています。4号機は完成に近づきつつあります。3号機までは客室内に試験用の装置が設置されていますが、4号機からは客室の設備や内装が付きます。5号機は機体にANAのカラーとロゴを塗り、国内で飛行試験を実施する予定です」と説明しました。

一方、受注状況は、全日空が25機、日本航空が32機です。最も受注が多いのはアメリカで、トランス・ステイツ航空、スカイウェスト航空、イースタン航空と合わせて340機と、全体の8割を占めています。またマンダレー航空というミャンマーの会社から10機の受注があり、2月にアメリカのリース会社から注文があった20機を合わせると、合計で427機です。

受注状況は順調にも見えますが、ヨーロッパからまだ注文がなく、地域的にアンバランスなのが課題です。量産の準備としては、名古屋空港の隣接地に量産工場を設立し、2016年3月に竣工式を行いました。ここで月産10機は製造したいという展望です。

継続的な開発と人材育成が航空機産業の発展の要

岩佐氏は、国内における航空機産業の確立に向けた提言として、「開発を継続することが最重要」と強調しました。「航空機の販売は、一般的な機種だと15年から20年くらい続きます。MRJは30年以上使える機体なので、量産して2030年以降に納品した場合、カスタマーサポートを含めて2050年、2060年まで続く息の長いプロジェクトです。ビジネスの確立には、グローバル競争を勝ち抜く仕組み作りを考えながら、開発を継続することが重要です」とまとめました。

そして、民間航空機事業を継続的に発展させていくためには、人材育成が不可欠と指摘します。「開発や製造ができるエンジニアのほか、販売や金融の能力を持った人や、販売後のカスタマーサポートを全世界で展開できるような人材の育成が求められるでしょう」と述べ、開発サイドのみならず、運航や管理など幅広い人材の重要性を語りました。

最後に岩佐氏は、「日本の航空機産業発展の足がかりになればとの思いで、今後もMRJプロジェクトを進めていきたい」と思いを語り、講演を締めくくりました。

登壇者
  • 米国三菱航空機株式会社
    モーゼスレイクフライトテストセンター
    副センター長 岩佐 一志氏

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