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ここがダメだよ、ニッポンの経営~なぜ日本の1人当たりGDPは低いのか~

【富士通フォーラム2016 特別講演レポート】

5月19日~5月20日に東京国際フォーラムで開催した「富士通フォーラム2016」。
20日の特別講演では、日本の経済・経営システムの根本的な問題を探るため、大手証券会社でアナリストを務めた後、文化財保護を手がける小西美術工藝社の代表取締役社長デービッド・アトキンソン氏と、グローバル事業戦略に詳しい経営学者の石倉洋子氏の対談が行われました。

日本の1人当たりGDPは世界26位

日本は国内総生産(GDP)が米国、中国についで第3位、世界に誇れる経済大国だと言われます。しかし、国民1人当たりのGDPはなんと世界26位。有数の経済大国にもかかわらず生産性はとても低い。これは一体なぜなのでしょうか。

石倉「日本は経済大国だ」と言われていますがどうお感じですか。

アトキンソン日本のGDPが世界第3位なのは「日本人が勤勉だから」「日本の技術がすごいからだ」と言われていますが、経済は"労働人口×生産性"で表されますから、ほとんどの場合が人口の差という要因で説明できます。

GDP順位を先進国で見ると1位が米国、2位が日本、次いでドイツ、イギリス、フランスと続きます。この順位にほぼ100%相関関係があるのは"人口"なんです。日本の人口は約1億2700万人。先進国で1億人以上の人口がいるのは米国と日本だけです。経済というものは、技術力の高さだけではなく、人口の多さで決まってしまうということを認識しておかなければなりません。

石倉1人当たりのGDPで見るとどうでしょうか。それに日本には人口減少という大きな問題もあります。

株式会社小西美術工藝社 代表取締役社長 デービッド・アトキンソン氏

アトキンソン1人当たりのGDP(IMF2016年統計;購買力調整済み)で見ると、日本は世界26位にまで落ちてしまいます。人口が減り、生産性も上がらない。給料が上がらないから消費が伸びず、デフレが続く。ですから、生産性を上げることは最大の課題です。生産性を上げれば、人口の減少を埋め合わせすることができるかもしれません。

観光で外国人客を誘致し、日本経済を再生する

石倉アトキンソンさんは2015年6月に『新・観光立国論』(東洋経済新報社)を出版し、日本経済における観光の重要性を指摘しています。なぜ観光なのか、ご説明いただけますか。

 

アトキンソン大きく低迷していた英国経済がイタリアやフランスを上回るようになったのは、サッチャー政権時代(1979-90)に移民を迎え入れたことがきっかけです。87年当時、英国の人口は5600万人でしたが、今は6600万人弱に増えています。

日本を見ると、人口は自国民だけではもう増えない。かといって移民を迎え入れるという考えにはなかなかなれない。そうすると残されているのは、観光業で外国人観光客を誘致することです。

一橋大学名誉教授 石倉洋子氏

石倉外国人観光客がたくさん来て消費してくれる。経済としては、移民政策と同じ効果が得られるということですね。

変わるということに対する大きな抵抗、反発

アトキンソン人手が足りないのであれば、生産性の高い仕事に切り替えていくべきなのに、日本はそういう方向になかなか進みません。これまでの人口増加時代の経営システムを継続する方法しかないという結論になってしまっているようですが、果たしてそれでいいのか、私は疑問に思います。

私ども小西美術工藝社(以下、小西美術)の例を挙げましょう。京都で文化財を修理する場合、契約は1年。4月から書類をつくり始め、6月に入札し、7月に足場を掛けて3月末までに修理を仕上げます。こうした方法だと4月から6月までは修復工事がなく、固定費ばかりかかってしまいます。ところが、複数年契約にしてもらった日光東照宮の陽明門では4月から6月にかけても修復作業ができ、その分、修復期間が短縮できます。余った時間にほかの仕事ができるようになりましたし、残業もする必要がなくなりました。良いことずくめなのに、京都は単年契約を止めて、仕事のやり方を変えようとすると役人は命をかけて抵抗する。その理由を聞くと、「明治からずっと続いているから」と皆さん答えるんですね。

石倉日本人の変わることに対する抵抗、反発はご指摘の通りですね。世界が変わっているのだから自分たちも変わるのは当たり前。でも、変わろうとすると何かを失い、そのことばかりに目がいってしまう。実は新しい機会や可能性が現れてくるのに、そこに目を向けようとはしません。

アトキンソン日本の経済・経営システムは人口が増えるという大前提に立ってつくり上げられたものです。すでに人口減少が進み、その一番の基礎が崩れてしまっているのに、根拠ある具体的な目標を立てて変えていくという発想になかなか切り替わりません。

石倉周りの環境が大きく変わってしまった今、何を目指したらよいのか、そのためにどうしたらよいのかというWhatを見出せないのですね。これまでのように、「そもそも何をしたいのか」を考えずに、How toばかりに引きずられて議論がまったく進まないことあります。

若い人たちに期待、早く彼らにバトンタッチを

アトキンソン最終的には経営というものは、美学ではなく、客観的な根拠に基づくものでなくてはなりません。「私、こんなに汗を流しました。すごいでしょ。給料を上げてください」というのは、これからの時代は通用しない。

私がオックスフォード大学で日本学を学び始めた1987年ごろは、日本のGDPは世界の20%を占めていました。それが今は5%になりつつあります。この20年間、経済が伸びないために日本の順位はどんどん下がっています。

物価を考慮した比較、つまり購買力平価でインドのGDPを見ると、すでに日本を追い抜いています。インドのGDPが3位になるのは時間の問題です。 30年後には日本は世界のトップ10から陥落しているかもしれません。そうなった時、日本の発言力はゼロ、観光客もあまり来ない。どれだけ無視される国になるかわからない。それでいいのでしょうか?

石倉まったくその通りですね。ただ何か変えるということについて言えば、私は、若い人たちに期待しています。「利益より公益」など、わけのわからないことを言い訳にして変わろうとしない年上の人たちが残れば残るほど日本の衰退は早まります。できるだけ早く若い人たちにバトンタッチすべきでしょう。

アトキンソン日本の潜在能力は、世界の誰が見てもトップ10から外れるものではありません。ただし実績を見ていると心もとない。

日本では実績と潜在能力に大きなギャップがあります。まず自分たちの潜在能力は何かを考えなければいけません。そしてこのギャップをどう埋めていくか。そのために若い人たちに主導権を渡していくことが大事ではないでしょうか。

人口減少がこれからますます進む中、日本の生産性を高めるためには、客観性のある根拠をもち明確な目標を立てながら、絶えず変革を行っていくことが大切です。いろいろな仕事のやり方を見直し、変えていくしかないのだと思います。

対談者
  • 株式会社小西美術工藝社
    代表取締役社長
    デービッド・アトキンソン氏

  • 一橋大学名誉教授
    石倉洋子氏

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