病気の変化を見抜く医師を支援する!複数のCT画像を1秒で位置合わせする技術

医師によるCT画像の比較は煩雑な作業を伴う

エックス線などを利用し、身体の断面を撮影する「コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)」。CT検査は複数の断面画像を用いて、がんなどの病気を見つけるために重要な検査となっています。がん検診などの検査だけではなく、病気の経過観察にもCTは活用されており、例えば医師は1年前に撮影した画像と今回撮影した画像を比較して、腫瘍の大きさや形、濃度などの変化を確認しています。しかし、患者の呼吸や心拍によって撮影のたびに腫瘍の位置がずれるため、医師は複数枚の断面画像から該当する断面を見つけ、その断面上においても腫瘍の位置を手動で合わせるといった煩雑な作業を行っています。

一般に、時間が経つと腫瘍自体が変化してしまうことがあるため、単純に過去の画像と今回の画像からそれぞれ腫瘍を探して同一性を判定する方法では、腫瘍の位置を合わせることはできません。そこで、腫瘍の周辺の血管や臓器の境界など経年変化しにくい特徴的な部位(特徴点)に着目し、比較する画像同士でこの特徴点の対応関係(ズレ)を手掛かりに、腫瘍の位置を自動で合わせる技術があります。しかし、これまでは腫瘍の周辺に特徴点が少ない場合は、位置合わせの精度が低下してしまう課題がありました。特徴点の抽出範囲を広げる場合、場所によって呼吸などに起因する変形の際の特徴点のずれ方が異なるため、離れた場所にある特徴点のズレから腫瘍位置を推定することが難しいという新たな課題が発生します。

自動位置合わせの基本的な考え方

腫瘍に近い特徴点のズレを重視し、位置の計算に反映

富士通研究所は、腫瘍の周辺に血管などの特徴点が少ない場合に、広範囲の特徴点を手掛かりにして、腫瘍の位置を自動で高精度に合わせる技術を開発しました。

腫瘍周辺に特徴点が少ない場合に対応するため、従来に比べ広い範囲から特徴点を探します。その際、腫瘍からの距離に応じて重みづけをして腫瘍位置のズレを算出します。腫瘍から近い位置の特徴点は、体の連続性からズレも類似する傾向にあるため、腫瘍に近い特徴点のズレを重視し、これを腫瘍位置の計算に反映しています。また、特徴点を対応させる際に比較する特徴点数が増えることで処理量が増えますが、比較に用いる画像特徴量(周辺画素情報)を簡素化することで、処理を高速化しています。これにより、複数枚の断面にわたる位置合わせを高精度かつ高速に行うことが可能になります。

画像検査の時間を短縮し、医師の負荷を軽減

開発技術による腫瘍の自動位置合わせ

肺疾患症例の実験では、実用化の目安となる誤差2.5mm未満で位置合わせ可能な割合が、従来の33%から83%へ向上することを確認しました。CT検査1件当たり数百枚の断面画像を対象に約1秒で腫瘍の自動位置合わせが可能です。

この技術により、医師が膨大な数の画像を確認する画像検査業務において手作業で行っていた位置合わせ時間を短縮でき、医師の負荷軽減につながると期待されています。また、検査にかかる時間を短縮できるため、患者の病院での待ち時間を短くすることにもつながります。

富士通研究所は、様々な画像による実証実験を重ね、2016年度中に 富士通製品への搭載を目指します。