ふらつきや異常を検知! スマートハウス居住者の生活をセンサーで見守る技術

高齢者の自立した生活を支援する共同研究を実施

厚生労働省の調査によると、2014年の日本人の平均寿命は男性80.50歳、女性86.83歳と、いずれも過去最高を更新しました。最近では、単に寿命を伸ばすだけではなく、日常的に介護を必要とせず自立した生活ができる「健康寿命」を伸ばすため、様々な取り組みが行われています。富士通では、健康管理や日常生活をICTで支援するためのシステムの開発や、そのシステムを用いた高齢者や患者向けのソリューション構築を目指しています。

また、富士通研究所では、個人の安全・安心で豊かな自立した生活を支援することを目的に、2013年7月より3年間、アイルランドの研究機関であるCASALA(注1)、INSIGHT@UCD(注2)と共同研究を実施しています。この共同研究では、スマートハウス(注3)に居住する高齢者や患者を対象に、居住環境に埋め込んだ約110種類のセンサーと患者が身に着けたセンサーから、日常生活におけるデータを収集しています。

(注1)センシング環境を備えた実験用スマートハウス「Great Northern Haven」をアイルランドのダンドークにて設立・運営。
(注2)生命科学・臨床科学・生体医用工学の専門家の知識を一つに集め、センサーWEBのコネクテッドヘルス分野への適用を推進
(注3)1980年代にアメリカで提唱された住宅の概念。家電や設備機器を情報化配線等で接続し最適制御を行うことで、生活者のニーズに応じた様々なサービスを提供する。

個人の特徴に合わせてイベントを抽出し、隠れた異常を発見

従来、センサーから得られる膨大なデータから、機能異常などの健康リスクに関係するデータの抽出は容易ではありませんでした。例えば歩行のデータの場合、歩幅や、ふらつき、強さなど、抽出できる特徴は50種類以上あり、さらにその特徴は個人ごとに異なるため、様々な疾病や体調不良で起こりうる運動機能不全の兆候など、日常におけるリスクを見つけることは困難でした。

このたび、共同研究の一つの成果として、スマートハウス居住者の膨大なセンシングデータから、個人の歩き方の特徴に合わせて、「歩行」と「ドアの開閉」など日常で連続する行動を数値化することで、隠れた異常を発見する技術を開発しました。

環境センサー、体の動作センサー、バイタルセンサーを用いて、起立や歩行といった日常の動作を継続的に抽出し、さらに個人や症例ごとに異なる特徴を数値化します。また、「立ち上がって歩く」などの連続する動作を繰り返し抽出することによって、これまで医療従事者が気づかなかった新たな運動機能不全の事象を発見することが可能になります。例えば、「ベッドから起きた後の歩行状態」が異常となる事例では、医療従事者によると、関節のこわばりや起床後の血圧などの異常が疑われるということが分かりました。

連続する動作や同時発生する動作の抽出イメージ

個人に合った治療やケアプランで、QOLの向上を

この技術により、例えば「足をひきずるように歩く」患者さんは、「ベッドから起きた」直後の「歩いている」時にバランスを崩す傾向があるなど、日常生活に潜んだ個人ごとに異なるリスクを検出することが可能になります。

日常生活のリスクを見える化することにより、医療機関や高齢者施設では、個人に合った治療やケアプランを立案することが可能になり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目指すことができます。

富士通研究所、富士通アイルランド、富士通は、本技術の2017年度中の実用化を目指し、アイルランドでの実証プロジェクトを通じて、ほかの症例での検証や、スマートハウス外での適用・検証を進めます。将来的には、自宅や施設などにおいて個人に合わせたリスク行動の提言や医療従事者向けの業務支援など様々なサービスへの適用を目指します。

開発技術の活用イメージ