「人間の五感」を理解する技術でビッグデータを解析する「データキュレーションサービス」

脳の仕組みをモデル化したディープラーニング

かつてコンピュータは、「人間がプログラミングする(知識を与える)ことで初めてその能力を発揮するもの」と考えられていました。ところが近年、人間の脳と同様に自ら学習し、知能を発達させてゆくAI(人工知能)の研究が進んでおり、さまざまな技術やシステムに応用されています。

AIというと、チェスや将棋でプロと対戦したり、スマートフォンやカーナビゲーションシステムに話しかけると応答したりというテクノロジーを思い浮かべるかもしれません。しかし昨今では、収集されたビッグデータの中から一貫性のある規則をコンピュータ自身が見つけ出し、学習する「機械学習」が注目されており、その手法の1つである「ディープラーニング」が脚光を浴びています。

ディープラーニングとは、人間の脳の構造をモデル化したニューラルネットワークに基づく新技術です。人間の脳は神経細胞(ニューロン)とニューロンとを結合させて情報を伝達するシナプスから構成されます。ディープラーニングは、このニューラルネットワーク構造を活用した最新技術として、画像・音声認識などの分野での応用が進められています。

ニューラルネットワーク

富士通ではAI技術を体系化した「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を2015年11月に発表。機械学習の研究に取り組んでいます。その一例が、富士通研究所が世界で初めて開発した、ディープラーニングによる中国語の手書き文字認識技術です。この研究では、認識率96.7%と、人間の認識能力を超える精度を達成しました。この技術により、従来人間が行っていたコンピュータへの入力業務や確認作業の自動化が可能になります。

人間の「五感」を認識するディープラーニング

ここで、ディープラーニングの活用可能性を紹介します。ディープラーニングは、人間が感じる「五感」を認識することが可能となる技術です。例えば、食品分野への応用では、食材画像から鮮度を認識し、傷んだ食材にアラートを出すことで食中毒を予防することができるかもしれません。また、交通分野では、カーナビゲ―ションシステムなどに組み込むことで、例えば、見通しの良くない交差点などで、危険を予測して運転者に注意喚起するといった応用も可能です。

こうした「視覚」を使った活用事例の他にも、「聴覚」を駆使した応用展開も可能です。例えば、音楽を聴く際に、ディープラーニングでアーティストの音声や声質などを認識し、似た声を持つ別のアーティストの曲をリコメンドするといったシステムへの応用も可能です。

また、ベテランの職人の動作や手さばきといった動きの特徴を抽出し、後継者がその動きを真似て技術を習得しやすくするなど、後継者の育成にもディープラーニングは活用できます。
プロフェッショナルが長年の経験に基づき導き出すのと同等なルールを、コンピュータ自身がデータから見つけ出せるようになるのです。
現在のようにIoTが進展し、様々な機器から膨大なデータが収集・蓄積される状況では、こうしたビッグデータをディープラーニングで高精度に分類、分析できるようになります。それによって、新たな価値の創造やビジネス領域の開拓につながることが期待されています。

ビジネス創出をサポートする「データキュレーションサービス」

ディープラーニングを用いた「データキュレーションサービス」イメージ

富士通は2012年から提供している「データキュレーションサービス」を強化し、ディープラーニング技術を活用したビッグデータ分析サービスの提供を始めました。これは、データ分析を専門とする富士通のキュレーターが、お客様が保有する画像や音声データを分析し、ディープラーニングを導入した場合の効果を検証するサービスです。その検証結果をもとに、お客様は新ビジネスの創出や業務改革を検討することができます。
従来の「データキュレーションサービス」では、機器のログや顧客情報、商品情報などの分析による予測モデルを提供していました。新サービスではさらに、ヒトの五感に対応したより精度の高いサービス開発や業務改革を支援していきます。

その1つとして富士通では、国内最大級のコスメ・美容関連情報サイト「Hapicana(ハピカナ)」を運営するクーシー様と連携し、ディープラーニングを活用した新サービス開発のプロジェクトを2016年1月より開始しました。このプロジェクトでは、ディープラーニングを用いて5万点の顔画像データを学習。そこから8種類の顔モデルを作成しました。その顔モデルを活用し、顔写真をアップロードしたユーザーにその特徴に合ったメイク方法やお勧めアイテムを提供するといったサービスの開発につなげます。

ディープラーニングを活用した「Hapicana」の顔分類モデル

多様な分野で活かされるディープラーニングの未来

富士通では、ディープラーニングを使った画像の機械学習を、製造や医療、広告、スポーツの分野で活用することを想定しています。例えば、工場で製品画像をもとに品質検査を行って完成品の精度を高めたり、レントゲン画像などから潜在する病巣を見つけて病気の早期発見につなげたりすることも可能です。また、電車内の乗客の人数や顔の向きに合わせて広告を変化させたり、一流選手に共通する特徴を映像から抽出して指導に活かしたりすることもできるでしょう。

富士通は、ビッグデータの利活用により新たな価値を創出することで、お客様のサービスや製品の付加価値向上、新サービスや新製品のスピーディーな開発に貢献する「コンバージェンスサービス」を推進しています。今後は、ディープラーニングをはじめとした最先端の技術を積極的に採用し、これまで自動化が難しかったような業務にも、ICTを活用して、お客様の業務改革や新ビジネス創出の実現に貢献していきます。