未病への対応をセンサーで支援! 漢方医の触感を見える化する技術

「病気になる前の段階」を診断する漢方医

皆さんは、「漢方医」をご存じですか? 漢方医とは、古代中国医学に起源がありながら日本で発展してきた問診・脈診・舌診・腹診などの手法を用いて診察し、主に生薬でつくられた漢方薬を処方して治療する医師のことです。江戸時代後期までは、医者といえば漢方医のことを指していましたが、杉田玄白や前野良沢による蘭学が始まった頃、西洋医学が登場。以降、西洋医学は現代の主流な医術となっていますが、近年、患者を総合的に診察する漢方医学が見直され、漢方医への期待も大きくなっています。

漢方医は、病気になる前の段階(未病)からのアプローチを得意としています。ただ病気を治すだけではなく、日常生活に制限のない健康寿命を延長するため、漢方医学では「未病」への対応が重要と考えています。

従来、漢方医学の診断基準は、漢方医固有の知識や経験に依存することが多く、診断内容を他の医師が客観的に把握するためのデータ作成は困難でした。また、医師の触診の感触をICTによってデータ化し、客観的にとらえて活用するためには、医師側にも患者側にも違和感のない柔軟で高感度なセンサーの実現が鍵となっていました。

触診の感触を「見える化」

グローブ型触感センサー(左)と触感データ取得システム(右)

このたび、富士通、富士通研究所、北里大学東洋医学総合研究所は共同で、漢方医の触診位置を検出し、硬さのデータ取得を高感度で可能にする薄膜圧力センサーを開発しました。これは、漢方医の手触り感を損ねない程度に柔軟なグローブ型触感センサーです。グローブ先端の指先部に反射マーカーを取り付け、マーカーの動きを赤外線カメラで検知し、漢方医の手の動きを約0.2ミリメートルの精度で取得します。患者に触れるグローブ型センサーは圧力検知素子の駆動電源が不要なため、低消費電力と安全性の高さを両立しています。

当センサーを用いて触診を模したデータ取得実験を行ったところ、触診の数値データ化が可能であることを確認できました。これにより、今まで困難だった漢方医の触診データの形式知化、客観化を図ることができ、西洋医学で診ると疾病には至らないものの完全な健康状態ともいえない未病状態のデータ作成・蓄積が可能となります。また、漢方医の支援や人材育成にもつながるため、漢方医療や漢方ドックの利用機会が、今まで以上に増えるかもしれません。

今後、富士通、富士通研究所、北里大学東洋医学総合研究所は、センサー感度のさらなる向上や手のひらなど圧力センサーの適用範囲拡大を検討し、開発技術により漢方専門医の触診をデータ化し客観化することで、医師の触診の支援につなげていきます。