スマホの通信速度が100倍になれば映像も音楽ももっとサクサク楽しめる

スマホの性能は20年前のスパコンレベルに

電車の中や喫茶店などで、スマートフォンやタブレット端末を使い動画を観たり、音楽を聴いたりしている人をよく見かけます。これらのスマートデバイスは、今やとても高機能。例えば、スマートフォンは「約20年前のスーパーコンピュータと同程度の性能」と言われるほどです。

これらのスマートデバイスには、映像や音楽を無線通信で受信できる小型の機器が取り付けられています。富士通と富士通研究所は、通信速度を従来の100倍に高める世界初の「300GHz帯小型受信機」を開発しました。

100倍以上も広い周波数範囲を使えるから、100倍もの高速通信が可能に

スマートフォンやタブレット端末の通信速度を速くする研究は、これまでも様々に進められてきました。しかし、スマートデバイスでやり取りされる情報は、ますます大容量化しています。今後は、4Kや8Kといった高精細な映像やハイレゾ音源などをスマートデバイスで楽しみたいというニーズが広がっていくでしょう。今よりも、さらに大容量なデータを瞬時にダウンロードできる無線通信の技術が求められているのです。

ただし、その技術の実用化には、現在のスマートデバイスが使用している無線通信の周波数帯を大幅に拡大し、無線通信を高速化しなければなりません。具体的には、テラヘルツ帯と呼ばれるとても高い周波数(100GHz以上)の電波の利用です。

テラヘルツ帯の電波であれば、既存のスマートデバイスが使っている無線通信に比べて100倍以上の広い周波数範囲を使うことができます。その結果、1台あたりが使える周波数範囲が広がり、通信速度を100倍も速くできるのです。

しかし、テラヘルツ帯の電波は空中を伝わっていくと著しく弱くなるという特性があります。そのため、弱い電波を受けても確実にデータ通信ができるように、感度の高い受信機が必要でした。

近年、テラヘルツ帯に対応する高感度な受信増幅チップは各社で開発されています。ただし、それらのチップを使った受信機となると、受信増幅チップを実装したモジュールとは別に、さらに外部アンテナが必要で、どうしてもサイズが大きくなってしまいます。スマートデバイスへの組込みが困難だったのです。

高速データ通信によってスマートデバイスでできること

このほど、富士通と富士通研究所は、これまで困難とされていたアンテナと受信増幅チップを低損失で接続する技術を開発し、容積わずか0.75立方センチメートル(出力端子部含まず)の300GHz帯小型受信機を実現しました。

この小型受信機がスマートデバイスに搭載され、データの受信速度が100倍も速くなると、毎秒数十ギガビットという大容量通信が可能になります。4Kや8Kの高精細映像でも瞬時に受信でき、スマートフォンやタブレット端末の画面で楽しめるようになるのです。

また、例えば、イベントなどでの入館ゲートにスマートフォンをタッチすると、入館処理と同時にイベント紹介動画がスマートフォンに送られてきたり、駅の改札ゲートにスマートフォンをかざすと、運賃の精算処理と同時に駅周辺のお得情報が配信されたりといったサービスも可能になります。

その他にも、コンビニエンスストアの情報端末にスマートフォンをかざすと、映像や音楽が瞬時にダウンロードできるようなサービスをはじめ、スマートデバイス同士での瞬時のデータ交換、スマートデバイスに保存されたデータをクラウド上のサーバに瞬時にバックアップするといった使い方もできることでしょう。

データの受信速度が高速になることで、スマートデバイスの可能性はどんどん広がっていきます。富士通は、2015年度中に今回開発した小型受信機を使った毎秒数十ギガビットの高速データ転送実験を開始し、2020年頃の実用化を目指します。

今回の成果の一部は、総務省の「電波資源拡大のための研究開発」の委託研究「超高周波搬送波による数十ギガビット無線伝送技術の研究開発」の一環として実施されました。