「富士通フォーラム2015 大阪」特別講演レポート

2015年7月28日~29日、大阪・中之島の大阪国際会議場で開催した「富士通フォーラム 2015大阪」。展示デモのほか、数々のセミナーや講演を開催しました。ここでは、JAXAの的川泰宣氏、元ローソン・ジャパンの都築冨士男氏、富士通マーケティングの浅香直也、日本旅行の平田進也氏のご講演内容を紹介します。

【特別講演1】小惑星探査機はやぶさの挑戦 未来をひらく宇宙開発

成功に導く原動力は「一つの目標を共有する強さ」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授 的川 泰宣 氏

2003年5月9日にM-Vロケット5号機によって打ち上げられ、小惑星「イトカワ(1998SF36)」に向かって出発した小型探査機はやぶさ。2005年9月に小惑星イトカワに到着後、 2005年11月26日には小惑星イトカワへの降下着陸を行い、試料採取のためのタッチダウンに成功しました。

富士通は、はやぶさプロジェクトにおいて、はやぶさの軌道決定システム、機体のリアルタイムモニタリングと異常診断システム、地上データ伝送システムの開発・運用を担っています。

「はやぶさ」は、2003年の打ち上げ後、燃料漏れや姿勢制御装置の故障、機体の要でもあるイオンエンジンの故障など、さまざまな予期せぬトラブルに見舞われました。

「復旧に向けて、毎晩徹夜で何か良い方法はないか考えました。こんなにあきらめの悪いチームはない。かろうじて復旧した通信も、パルスしか受信できなかった。イオンエンジンを地球に向けるための必要なデータを導き出すために、膨大な数の1bit通信を繰り返し、地球に戻る軌道修正に3年を費やしました」と、的川氏は当時を振り返ります。

その後、致命的ともいえる4機目のイオンエンジンの故障を乗り越えて、はやぶさは2010年にミッションを達成します。
「プロジェクトメンバーはシステムの隅々を熟知しています。ピンチに陥ったときに十名くらいのメンバーが集まると、アイディアの引き出しが豊富になる。非常に多くの時間と労力がかかるからこそ、それぞれが助け合い、励まし合い、いろいろな心づくしをして、必死の思いで乗り越えた。一つの目標を共有していく強さがチームの団結力を高め、成功に導く原動力になったのです。この志に価値があると私は思います」

また的川氏は、「はやぶさのシステム開発やオペレーションには、何人もの富士通のエンジニアが活躍していた。日本のものづくりの素晴らしさと、チームの団結力が、はやぶさプロジェクトを成功に導いたのだと思います」と、プロジェクトに関わった日本企業のことにも触れました。

糸川氏は「常識から脱却し、ユニークな発想を生む人」

はやぶさが辿り着いた小惑星イトカワは、日本の航空宇宙工学を担い、ペンシルロケットを開発した糸川英夫氏にちなんで名付けられており、的川氏は糸川氏の弟子にあたります。

糸川氏が牽引してきた宇宙への挑戦について、的川氏は、「大きな未来に向かって開いたプロジェクトを作り、それを実践しようとすることによって、敗戦で自信を失った日本の若者たちを元気にしていきたいという思いがあった」と振り返ります。

「糸川氏は、『目的地に行けるか行けないか』ではなく、『目的に行くためにはどうすればよいか』という直裁的な発想を思いつく人です。常識から脱却し、あらゆる問題に対してユニークな発想を生む才能を持っていました」と、的川氏は糸川氏の当時の印象を語りました。

プロジェクト成功のカギは「たゆまぬ努力と志」

現在飛行中の「はやぶさ2」が目指す小惑星は、イトカワとは異なり、水や有機物を含んでいます。的川氏は、「地表サンプルが採取できれば、地球誕生の起源や、我々のような生命体誕生の起源の手がかりが掴めるのではないかと世界中から注目されています」と、『はやぶさ2』が担う宇宙開発の未来を示唆し、講演を締め括りました。

日本のものづくりの技術とチームの志が結集したはやぶさプロジェクト。
たゆまぬ努力と志、ピンチに陥ったときに乗り越える力、助け合い、団結し、あきらめないことが、プロジェクトを成功に導くのだという熱い思いが伝わる講演でした。

【特別講演2】ローソンの再建に学ぶ企業経営

問題多発のローソン事業、存続か撤退かの選択

(元)ローソン・ジャパン 代表取締役 株式会社 都築経営研究所 代表取締役 全日本農商工連携推進協議会 会長 都築 冨士男 氏

富士通は、ローソンと手を組み、在宅医療と買い物支援を組み合わせた高齢者向けサービスに乗り出すなど、様々な取り組みを行っています。今回ご講演いただいた都築氏は、ローソン創業4年で経営者が二人交代するという激動の中、出店を一時凍結した当時の三代目社長に就任されました。

当時、ローソンは親会社であるダイエーにとってのアキレス腱にも等しい存在でした。一端切れてしまった以上、グループ全体の足まで引っ張りかねないほどの最悪な状況下にありました。「ビジネスの最も基本となるシステム作りが、ローソンには欠けていた」と、都築氏は振り返ります。

コンビニ事業からの撤退も一案としてありましたが、当時セブンイレブン、ファミリーマートが破竹の勢いで増えていく中、「ダイエーだけがコンビニエンスという業態を放棄することは、将来、禍根を残すかもしれない。また、全ての問題を解決してから出店となると、永遠にセブンイレブンに追いつけない」という理由から、「一定の条件をクリアしながら存続していく」ことを決めました。

コンビニは"5分で買い物をする"場所

都築氏は、経営指導型のフランチャイズシステムを導入し、幹部社員を集めて合宿を行いました。「人を養成することが復活のカギ」と考えたからです。また、毎日店舗に出向くと同時に、70坪の店舗を30坪に縮小し、商品を毎日配送することで、売れた分だけの発注を可能にしました。その結果、バックヤードに在庫を確保する必要がなくなり、品揃えを落とさずに収益性を高くすることができました。

また、「コンビニエンスアイテム」として、新しい商品の開発にも着手しました。「コンビニはスーパーと違い、『5分で行って5分で買い物をする』場所。そのため、ビールは店舗で冷やしておく、水や氷も用意しておくなど、発想を転換しました」と都築氏。そんな中で爆発的なヒットとなったのが、「からあげクン」(鶏の唐揚げ)です。

「ローソンでは元々、揚げていないコロッケを売っていましたが、あまり売れ行きは良くなかった。もったいない、何か良い方法がないかと店舗にフライヤーを入れ、揚げたてのコロッケを売ってみたところ、すぐに人気商品となった。これをきっかけに登場したのが『からあげクン』です」と都築氏は語ります。

その後、からあげクンはローソンの看板商品に成長し、Lチキ、フライドポテトなど、ローソンのフライドフーズは広がりをみせていきました。こうした再建の結果、新生ローソンは10年間で2600店舗にまで拡大したとのことです。

経営者の条件「4つの能力」とは

また、都築氏は、課題を解決するために必要なこととして「マーケティング」「コラボレーション」「ベンチマーク」の3つを挙げました。「時代が変わると売れるものが変わる。その競争に負けない独自性が必要。また、課題解決機能を持っている企業とコラボレーションすることや、「3つの"I"(イミテーション、インプルメント、イノベーション)が常に必要です」とし、ニチイとセブンイレブンがコラボした例や、ウェンディーズが冷凍ではなく生肉のパテを使ったなどの例を紹介しました。

最後に都築氏は、これからの経営者に必要な4つの条件として「情報収集力」「洞察力」「意思決定力」「リーダーシップ」を挙げました。「正しい情報を収集し、正しい時代を見抜く力があれば、正しい意思決定ができる。そうすることで、企業や団体は自然とリーダーシップを発揮することができるのです」と、都築氏は強調します。

「情報は興味があるところにしか集まりません。そのためには、いかに好奇心を持ち、いかに情報が集まるか。集めた中には様々なビジネスチャンスがあります」と都築氏。「私は好奇心だけは誰にも負けないと思っています」と最後まで熱く語り、講演を終えました。

【富士通マーケティング特別講演 第一部】 ICT活用によるビジネスイノベーション

SoRとSoEを組み合わせ、お客様との関係性の変化をとらえる

株式会社富士通マーケティング 執行役員 クラウドサービスビジネス本部長 浅香 直也

「IoT(Internet of Things)を語るためには、"SoRとSoE"を解説しなければなりません」と、浅香は講演を切り出しました。SoRとは「Syetem of Record」のことで、事実を記録することに主眼を置いた「記録のためのシステム」のこと。それに対して、SoEは「System of Engagement」のことで、ビジネス上で関わる人々の関係性を強化するためのシステムを指します。浅香は「ビジネスでは、お客様やパートナーといった関係性は常に変化しています。SoRとSoEを組み合わせることによって、関係性の変化を動的にとらえ、ビジネスで活かすことが大事」と、両者の重要性を強調しました。

次に浅香は、身近なIoTの例として「ビーコン」を紹介しました。ビーコンは、Bluetoothを使って電波をつかまえる小型の電波発信装置で、世の中に存在する様々なモノに通信機能を持たせ、携帯電話やパソコンから「買い物情報」や「バスの接近情報」などを提供するものです。「ビーコンはインターネットに接続するIoTを支える技術として注目されており、その便利さと使いやすさから、IoTの壁は確実に低くなっています」と浅香は語ります。

ここで浅香は、今話題になっている「ドローン」や世界初の感情認識パーソナルロボットのビデオを流しました。「将来的には、例えば銀行業務で、お客様の質問を蓄積し、その場で人工知能が答える時代が来るかもしれない」と、AIの可能性を語り、第一部の講演を終えました。

【富士通マーケティング特別講演 第二部】"浪速のカリスマ添乗員"が語る「ほんまもんの顧客サービスとは?」

面白さに真面目さをプラスして初めて、真のサービスが生まれる

株式会社日本旅行 カリスマ添乗員 平田 進也 氏

「私のことを知ってる人は手を挙げてください!」――講演の冒頭で、平田氏が会場に語りかけると、殆どの聴講者が挙手。それもそのはず、平田氏の関西におけるTV出演は600回以上、人呼んで「カリスマ添乗員」、モットーは「人を喜ばせること」。関西の富士通フォーラムの最後を締めるに相応しい講演でした。

「赤い風船」でおなじみの日本旅行の平田氏が、社内ベンチャー「平田屋」を立ち上げたのは4年前。「とにかくお客様が喜ぶことをやろう」と、「帰りのバスでもしゃべり続け、お客様を寝かさない」というバスツアーを思いついたとのことです。平田氏のツアーは大人気となり、「あなたのツアーだから参加する」というコアなファンも増えていきました。

「旅行は非日常。非日常を経験していただくために、できるかぎりのことはやる」と平田氏は語ります。バスの中でしゃべり続けるのはもちろん、宿泊先では女装してお客様を楽しませるなど、楽しんでいただくためにはあらゆる努力を惜しみません。「人を笑わせてこそ、金は動く。金を動かせばバブルがおこる。私は人を笑わせて、お金をもらっているんです。そのためにはあらゆる工夫をする。工夫のある所に利益はあります」。

そんな平田氏は、ツアーを企画するポイントは「信頼関係」と語ります。「お客様との信頼関係がなかったら、ツアーは売れない。この信頼関係を築くために何年もかかりました」と苦労を述べ、大切なのは「真面目さ」と「付加価値」だと強調しました。

「私はツアーを企画する時、母親にこの料理を食べさせたいか、この思いをさせたいかを、いつも念頭に置いています。面白さだけではこの商売は成り立たない。真面目さという付加価値をプラスして初めて、お客様はついてきてくれる。無欲のギブがあってこそ、お客様は選んでくれるのです」

「100点満点は通過点。常に120点を目指してやっている」と語る平田氏。「お客様起点」を考えてみた時に、他業種でも参考になる話が随所に込められていました。