見えてきたワークスタイル変革成功へのヒント[富士通フォーラム2015 カンファレンスレポート]

[カンファレンス]ワークスタイル変革による業務効率の最大化 企業のワークスタイル変革を成功に導くために

東京・有楽町にある東京国際フォーラムにおいて、2015年5月14日~5月15日の2日間にわたり、富士通最大のイベントである「富士通フォーラム2015東京」を開催しました。本カンファレンスでは、日経BPの中野淳氏、焼津市の吉田和之氏、IDC Japanの敷田康氏、富士通の小田成がそれぞれ講演。ICTを駆使してワークスタイルを変革させようという取り組みを実現し、組織内に根付かせるにはどのような方策が有効なのか、そのヒントが見えてきました。

自社の強みの再確認を

株式会社日経BP コンピュータ・ネットワーク局教育事業部長 中野 淳 氏

最初に登壇した日経BPの中野氏は、タブレット端末の登場が企業内のワークスタイルを大きく変えつつある現状に触れ、今後は、新しい形態のウェアラブル端末が変革を牽引していくだろうと予測しました。

変革を成功させるポイントにも言及し、第1に述べたのは自社の強みを再確認することの重要性です。「その強みをより生かすことを目的にすべき。既存の課題を解決しようというアプローチだけでは、ブレークスルーはありません」と語り、さらに、多様なソリューションを選択肢に入れるべきであることを示唆しました。合わせて、新たなワークスタイルのパターンを作成して社員に提示する、それらを管理職が実践する、といった仕組みづくりの重要性も強調しました。

職員の意識向上がカギ

焼津市 情報政策課 課長 吉田 和之 氏

続けて焼津市の吉田氏が登壇し、同市庁におけるタブレット導入・活用の現状を語りました。同市は2014年、ノートパソコンに換えてタブレット端末を全面導入。職員はそれらを、庁舎内ではデスクトップとして、自宅や外出先ではコンテンツビューアとして活用しています。タブレット端末の導入により、会議のペーパーレス化といった目に見える成果だけではなく、すでに大きな成果が出ています「自宅や外出先でのコミュニケーションやシステム閲覧が容易になったことが、職員たちの“気づき”を促進。自ら率先して業務改善に取り組む土壌を形成できました」と吉田氏は説明します。

市民サービスの質も高まりました。窓口でタブレット画面を見せながら説明できるため、市民の理解度が格段に向上。さらに、遠隔地にいる担当者が、カメラ機能を使って通訳や手話サービスを提供する体制を整えました。

こうして実現したワークスタイル変革を促進するため、同市が力を入れているのが「職員の意識向上」です。その一例が、職員がワークショップ形式で作成した「ビジョンマップ」。これは、庁内のワークスタイル変革を通じて市民サービス変革、コミュニティ変革を呼び起こそうという構想を可視化したものです。「職員の働きやすさが高まることにより、新しいアイデアやサービスが生まれやすくなります。その結果として、若い世代や高齢者、外国人が暮らしやすい町になる」というプロセスを1枚の図に描きました。ともすれば変革に対して消極的になりがちな職員の意識づけに、このビジョンマップが役立っていると吉田氏は言います。

投資対効果の明確化が理想

IDC Japan株式会社 PC,携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャー 敷田 康 氏

続いて登壇したIDC Japanの敷田氏は、ワークスタイル変革に必要な要素を3つ挙げました。ITの活用、成果主義や在宅勤務制度の導入といった人事・労務面の施策、コミュニケーションスペースやフリーアドレス対応オフィスの設置といったファシリティの改善です。

では、これらを実施するための投資を意思決定者から引き出すにはどうすればよいのでしょうか。敷田氏は、IDC Japanが実施した企業のモバイル導入展開の意思決定要因に関する調査に基づき、次のような解を示しました。

まず重要なのは、業績に直結した目的設定です。「投資対効果を明確化することが理想といっても、拙速な判定は避けるべき」と敷田氏は念を押しました。「ワークスタイル変革への投資を求める場合は、着実に効果を生み出すステップを示すのが賢明なやり方。試行錯誤を繰り返しながらの拡大・発展を前提とすることを、意思決定者と“にぎる”ことが重要です」。

加えて、投資を一過性ではなく継続的なものにするポイントを紹介しました。それは、新たなワークスタイルを支える制度やシステムの使い勝手、いわゆるユーザーエクスペリエンス(UX)に配慮することです。「UXデザインの成否がユーザーの利用率を左右します」と敷田氏は断言。「調査の結果、モバイル環境の増強を促進する大きな要因の1つがユーザーの利用増加であることが分かりました。一方で、利用率の低さが予算を削る理由になっています」と語りました。

国内グループ会社200社のコミュニケーション基盤を統一

富士通株式会社 執行役員 小田 成

最後に富士通の小田が、同社で実践しているワークスタイル変革への取り組みを紹介しました。

富士通は2014年3月、国内グループ200社のコミュニケーション基盤を刷新・統一。2015年3月に、グローバル展開を完了させました。現在、グループ約500社、約16万人がメールやWeb会議、グループ内SNSといった機能をパソコンや携帯電話、スマートフォン、タブレット端末から利用しています。

新基盤の活用は順調に進んでいます。例えば、1日当たりに実施されるWeb会議は4000件以上に上り、国内出張費用の削減につながっています。このほか、グループ内SNSにはすでに1800ものコミュニティが誕生。小田は、「グローバルな意思疎通が容易になり、組織の壁を超えたナレッジ共有に手ごたえを感じています」と話しました。

また、保守業務については、富士通のクラウドサービスを使い、よりセキュアな環境を実現しています。外出先で作業情報確認からマニュアル参照、作業完了報告までを完結できるため、移動にかかる時間やコストを大幅に圧縮。年間2万9000時間に上る工数を削減できたことを明らかにしました。

タブレット端末やスマートフォンによるワークスタイル変革は着実に進み、焼津市や富士通のように大きな成果を上げる組織も多数登場しています。その一方でタブレット端末やスマートフォンを導入しただけで、有効活用されず、結果としてホコリをかぶってしまうケースも少なくありません。変革を成功させるには、目的や費用対効果の明確化が欠かせないということが実感できるカンファレンスとなりました。

登壇者
  • 株式会社日経BP
    コンピュータ・ネットワーク局
    教育事業部長
    兼 日経BPイノベーションICT研究所
    上席研究員 中野 淳 氏

  • 焼津市
    情報政策課
    課長 吉田 和之 氏

  • IDC Japan株式会社
    PC,携帯端末&クライアントソリューション
    グループマネージャー 敷田 康 氏

  • 富士通株式会社
    執行役員 小田 成