IoTの活用で実現するビジネスイノベーション。多様なパートナーシップで新たなビジネスと価値を共創する[富士通フォーラム2015セミナーレポート]

[セミナー]イノベーションを加速するIoT実践事例と富士通の取り組み

東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて、2015年5月14日~5月15日の2日間にわたり、富士通が主催する最大のイベントである「富士通フォーラム 2015東京」を開催しました。14日のセミナーでは、お客様との共創によるビジネスイノベーションについて、人と社会に寄り添うロボット技術で製品・サービスを開発するRT.ワークス株式会社様のIoT実践事例と、イノベーションを支える富士通の取り組みを紹介しました。

IoT技術の活用がもたらすビジネスイノベーション。ポイントは企業間連携とデータ連携

あらゆる「モノ」と「人」がインターネットで繋がり、収集した膨大なデータから新たな価値やビジネスを創出する「Internet of Things(IoT)」の時代が到来しています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれる2020年には、500億個を超えるセンサーやデバイス、そして人がインターネットに接続されると予測されています。

セミナーでは、まず富士通株式会社 IoTビジネス推進室長 須賀高明が、IoTの国内市場規模が大きく拡大すると予測されていることを指摘。「高い成長率を支えているのは、IoTによって引き起こされる3つのイノベーションです」と語りました。これらは、「企業活動のイノベーション」「企業間連携のイノベーション」「データ連携のイノベーション」で、「3つのイノベーションによって生まれた新たな価値について、お客様に提供する図式を早く提供すればするほど、他社が参入しにくくなります。このモデルをいかに早く構築するかが重要課題です」と、今後の目指すべき方向性を示しました。

ものづくりの現場で実践している富士通の取り組み。IoTによる生産ラインの「見える化」で生産効率向上

富士通は様々な分野でIoTを活用したビジネスイノベーションに取り組んでいます。須賀は、続けて、当社の工場におけるIoT技術活用の取り組みを紹介しました。「IoTでは収集したデータを解析し、未来予測を立て、具体的なアクションに繋げていくという流れがありますが、これをものづくりにも適用することで、サプライチェーン全体が大きく変わっていくのです」と述べ、実際に富士通の会津若松工場、山梨工場、島根工場の3工場の事例を説明しました。

会津若松市の半導体工場では、無菌ルームを活用してレタスを栽培しています。生産現場での一次データと、経営・管理部門の二次データを統合して活用することで、生産と経営の最適化を図る取り組みを行っています。さらに、工場で消費する電力や生産実績などのデータを、クラウド上で集計し、マイクロソフト社のクラウドプラットフォーム「Azure」に集約。その上に展開した環境経営ダッシュボードで一元管理することで、工場の全体最適化を図る試みも始めています。

また、製造ラインの見える化の取り組みでは、島根県のパソコン工場での「製造ラインから外れた部分の見える化」の事例を紹介しました。出荷後に初期不良で製品が戻ってきた場合、製造工程で何が起きていたのかを可視化し、返品との相関関係を割り出してフィードバックすることで、返品そのものを減らす取り組みです。「製造ラインの見える化はもちろん、製造ラインから外れた最終試験の工程やリジェクト品の修理過程など現場全体の可視化が必要です。その場合、現場から膨大なデータが集まることになりますが、それをまとめてサーバやクラウドで管理するのは大変なので、現場である程度データを処理できるような仕組みを取り入れています」。具体的には、当社のクラウドとインテル社のゲートウェイを連携させて現場のデータを分析しています。

その他にも、交通分野での取り組みとして、トラックの車載機に運転データを蓄積し、それを運転者にフィードバックすることで、安全運転や燃費向上の指導、配送レポートの自動生成といったメリットを物流会社に提供している事例を説明しました。

IoTを組み込んだ歩行アシストカートで利用者の健康管理から部品管理までを実現する

生活産業の分野では、RT.ワークス株式会社 代表取締役 河野誠氏が、IoT技術を組み込んだ歩行アシストカートの事例について紹介しました。歩行アシストカートとは、おもに高齢者が坂道などを歩行する際、転倒せずに安全に歩けるようにサポートするカートです。高齢者が、安全に楽に外出できるようになれば、家の中に引きこもらずに、それぞれの世代に応じた社会活動に幅広く参加できるようになる、そういったコンセプトで開発されました。

この歩行アシストカートには富士通のIoT技術が組み込まれ、利用者の位置情報の確認や歩行履歴の管理、健康管理、転倒発生など緊急時の通知などを行います。「転倒防止」に加えてこの「見守り」が特徴的な機能ですが、ここからさらに進めて「社会参加の支援まで視野に入れたサービスの展開を目指しています」。

また、IoT活用の幅をさらに広げて、発注からお客様に販売するまでの流れを、部品固有のURLで可視化して管理するサプライチェーンマネジメントに応用したり、歩行アシストカートの走行距離、電池の残存量などを確認できるようにしたりできる機能も紹介。部品交換や電池交換などのタイミングを把握できるなど、製品管理システムへの応用も広がっています。

さらに、顧客管理にもIoTを活用すれば、例えば、コールセンターにお客様から電話があった場合、利用している歩行アシストカートの過去の履歴や現在の状態、故障診断といった情報をすぐに確認することができます。「顧客管理はもちろん、製品管理から個別の部品管理、さらには部品サプライヤーまでを巻き込んだ、サプライチェーン全体にまたがる管理へと発展させられます。IoTの仕組みによって効率よく実現できると考えています」と今後の方向性について語りました。

IoTを軸としたお客様とのビジネス共創を目指す

本セミナーの最後に、再び登壇した須賀は、「多様なベンダー様とパートナーシップを組むことで、強いIoTプラットフォームを軸としたエコシステムを形成する」と語り、富士通のIoT戦略の方向性について語りました。具体的には、富士通がRT.ワークス様と取り組んでいるように、「スモールスタートで企画を実際に動かし、ビジネス実証を行い、その結果から事業化の判断をしていく」という取り組みです。その新たな事業化プロセスを支援するため、富士通ではIoTの利用シーンをまとめたモデルやアイデアをはじめ、ビジネス実証に使用するインフラ、事業化支援のための商用インフラなどを提供します。「富士通ではこうしたさまざまな取り組みを通して、IoTを活用した新しいビジネスをお客様と共に創造していきたいと考えています」と述べ、講演を終えました。

登壇者
  • RT.ワークス株式会社
    代表取締役 河野 誠氏

  • 富士通株式会社
    ネットワークサービス事業本部 IoTビジネス推進室 室長 須賀 高明