IoT時代の新しいものづくりとは?(前編)

最近ドイツが国を上げて取り組んでいる製造業革新プロジェクト「インダストリー4.0」が話題となっています。これはデジタル化によってより高度な生産システムを実現する第4次産業革命と言われ、アメリカをはじめ世界各国でも同様のプロジェクトが動き出しています。このような時代に富士通でどのような取り組みがなされているのか、そもそも富士通のものづくりはどのようなものなのか、ものづくりソリューションの分野に造詣の深い永嶋寿人・ものづくりセンター センター長に語っていただきました。

現在携わっている事業について教えてください

産業・流通営業グループとして、お客様に対して、また、社内の営業に向けてものづくりのソリューションをプロモーションしています。

富士通自体がメーカーですから、社内のものづくりによって獲得してきた豊富な実践事例やノウハウが存在します。その蓄積をベースに、これまでCADやシミュレーションなどのツールを開発提供してきましたが、お客様のご要望を受けて生産ラインなどの設計そのものから品質管理やものづくりの高度化をセットにして作り上げることや、さらには、お客様のものづくりをお手伝いさせていただく受託製造へとものづくりへの関わりが広がっています。

ご自身も以前からものづくりに関わっていらしたのですか?

私は若い頃から営業一筋でした。現在の組織に来たのは2008年です。当時はPLMビジネスセンターという名称で、「ものづくりビジネスセンター」という名前に変わったのは2年ほど前です。

製造業のお客様には、大きく分けると装置業と組立業という2つの分野があります。装置業では昔から富士通のシェアが高く、情報システムに関わるビジネスを積極的に展開してきました。しかし、組立業についてはなかなか他社に及びません。そこで営業としては情報システム以外のビジネスを模索してきました。私が営業職となった当時すでにCADAMという2次元CADシステムが存在していました。コンピュータ上で設計するのがCADであり、航空機設計から発展して普及するようになったデファクトなツールがCADAMでした。当初はIBMのみの販売でしたが、富士通がIBMと互換性を持ち日本語処理ができるCADAMの販売を開始し、私もその営業に携わりました。この頃からものづくりと関わる機会が増えたのです。

現在の組織に来た当初は、CADとPDM部品表という情報管理システムを中心に、CADで作成したデータを検証できるVPS(Virtual Product Simulator)というシミュレーションツールを販売していました。

その後VPSの機能拡張として、工場で組み立てる際の手順をシミュレーションし、簡単に組み立て手順書が作れるツールを開発しました。さらにGP4(Global Protocol for Manufacturing)という組み立て業務のシミュレーションをベースに、製造ラインそのもののシミュレーションが実現しました。

製造業界では次世代ものづくり「インダストリー4.0」が話題ですが、富士通はどのように取り組んでいますか?

インダストリー4.0はドイツのプロジェクトです。日本はというと企業各社は、やはりそれぞれものづくりに取り組んできた歴史があります。富士通も富士通流のものづくりをずっと推し進めてきたわけです。自分たちの取り組みについて「インダストリー4.0的に言えばこうだ」ということはあっても、それは富士通版のインダストリー4.0ということではありません。

もちろん今後IoT(Internet of Things)によってすべてがつながれば、階段を1つ上がったような別の世界が広がるでしょう。富士通としてはこれまで粛々と独自のFJPS(富士通生産方式)を実践してきた経験を基に、「IoTの世界ではさらにこのようにします」と打ち出していく姿勢を取っています。FJPSによって高度なものづくりができる世界の実現を目指していくということです。

別の言い方をすれば、これまではあくまでコンピュータ上のシミュレーションだったものを、フィジカルなレベルまで引き上げていく、つまり富士通の自動機(注)やロボットまで含めて販売していくという次の段階に来ています。
(注)自動機:製造支援装置(自動微細ネジ締め機、グリス塗布機、ルータ式基板分割機、極小チップ部品リワーク装置など)

富士通流のものづくり「FJPS」とはどのようなものでしょうか?

富士通は2004年に、日本のものづくりの発展に大きく貢献してきたTPS(トヨタ生産方式)を導入しました。そこに自社ソフトウェアツールを活用するなど、TPSに富士通のICTをプラスした独自の生産方式「FJPS」で、ものづくりメーカーとして自ら構築してきたものです。

2012年には、そのノウハウをお客様に提供しようと「ものづくり革新隊」をスタートさせました。富士通の社内で革新を起こしてきた者達が、お客様にも革新を起こすお手伝いをするプロジェクトです。具体的には「ものづくりエキスパートサービス」「ものづくりツール」「ものづくり受託サービス」の3つのサービスを提供しています。

なかでもエキスパートサービスは、実際に現場作り・現場改善も含めてお客様と一緒にやらせていただきたいという思いからスタートしたものです。現場改善のノウハウのプロとして向上支援をしてきた者と、フィールドイノベーターのFIer、そして富士通総研のコンサルタントの3名が1チームとなりお客様の現場に直接伺って問題の発見や解決策の提案、改善を行います。たとえば、GP4の導入によってラインづくりのツールはできますが、ツールをお客様に届けるだけではなく、お客様と一緒に課題解決に取り組む試みです。

このサービスでは、いきなりお客様の現場に伺うのではなく「まずは富士通のものづくりを、ぜひ実地で検証してください」とお客様にお越しいただいています。島根富士通、兵庫県の富士通周辺機、石川県の富士通ITプロダクツ、そして福島の富士通アイソテックの4つのモデル工場で「FJPS」のノウハウを実際に見て、感じていただくということから始めています。

その上で「富士通を検討してみたい」というご要望をいただいてから、先方の現場に現場改善のプロがうかがっています。こうした手練れの人間は1日現場を拝見するだけで改善点を見極め、問題解決のためのご提案をすることができます。たとえばここでは人の動きが無駄であるとか、この部分では在庫が多いとか、これとこれは並行してラインを作ったほうが効率的といったことですね。そうやって初めて実際に有償のサービスとして動き出します。

システムの話とはいえ、大変人間的なところから始まるものなのですね。

富士通はヒューマンセントリックを標榜しています。最終的にはどの製品でも人が使い、行動しますから、より細かいところにICTで寄り添い、未来を便利にしていくことを目指しているのです。そういう技術については、富士通はこれまでにかなりの経験を積んできています。だからこそ、クラウドも含めたネットワーク技術、ソフトウェア技術、データセンター、そしてそのアプリケーション、ソリューション、そしてビッグデータなど、IoTの時代に向けて確実にバリューアップしていかなければなりません。

たとえば実際にデータを取り込むのはセンサーやカメラなどですが、これを生かすには解析する力、つまり人間の力が必要です。今話題になっている人工知能による機械学習も、データを解析する人間の力によって支えられています。ものづくりの現場でも、データをより深く読み、業務から見てどのように改善すべきかを判断する際には、人が介在するのです。データを取得する技術が今後どれだけ発達したとしても、重要なのはそれをいかに解析して業務的視点から新たな気づきへと昇華できるかという点になります。自動化が進んでいけばいくほど、人が介在する領域はむしろ増えるかもしれません。

以前ビッグデータについて、分析の視点、つまり人が鍵となるというお話がありました。ものづくりの現場でも同じことが言えそうですね。

そうです。富士通のものづくりの現場で経験を積んできた人材が重要な役割を担っています。

当社は、ものづくりのすべてが分かっているわけではありません。富士通は富士通の事業としてのものづくりについては詳しいですが、それ以外については知らないわけです。自動車も飛行機も造ったことがありません。そこで、今後のサービスとして取り組もうとしているのが、さまざまな業種におけるものづくりの知見やノウハウ、見識を、ICTとうまくミックスさせていくことです。たとえばTPSで言われる整理整頓といった部分は普遍的ですね。そうした部分で富士通なりにお客様をご支援させていただく、そしてICTによってお客様のものづくりのノウハウ、お客様ご自身の業務で得てきた知見を取り入れていただきます。そのうえで自動化やシミュレーションができるようにするのです。

後編では、ものづくりソリューションとしてのこれまでの取り組み、そして新たなサービスについてご紹介します。

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