デジタルマーケティングのこれから ~"鍵"はデータドリブンでのヒトへのアプローチ~(後編)

生活のなかのあらゆるものがネットにつながるIoT(Internet of Things)時代の到来にともなって、デジタルマーケティングの可能性もこれまで以上に注目されています。「視線検出」など、さまざまな先進的なテクノロジーの開発に成功しています。もはや人間の五感のうち、味覚・嗅覚向け以外はテクノロジーによって再現や体験提供ができる時代になりました。前半に引き続き、富士通におけるデジタルマーケティングのビジネスを牽引する小林泰・統合商品戦略本部 ビジネスアプリケーション推進統括部デジタルマーケティング推進部長に語っていただきました。

デジタルマーケティングのこれから ~"鍵"はデータドリブンでのヒトへのアプローチ~(前編)はこちら

デジタルマーケティング分野における富士通の成功事例を紹介していただけますか?

前半でも触れたように、デジタルマーケティング実践の強みはお客様の購買行動が、購買前から購買後までのさまざまな履歴によって可視化されるという点です。お客様に関わるあらゆるデータを分析することで、"ヒト=個"にフォーカスした最適なサービスや商品をご提案することができます。

北米で約500店舗を展開するバックや革小物のトップブランドのお客様事例をお話ししましょう。「取り寄せ管理」「店舗間での"ヒト=個"情報のリアルタイム共有」に課題をお持ちでした。そこで、salesforce.comを採用したオムニチャネル型のテンプレートを活用。半年で店舗のパソコン、タブレット、POS端末の連携を実現し、基幹システムと店舗側に跨る顧客情報へ容易にアクセスできるにようなり、売上を150%に伸張させました。

また、ご来店されたお客様がフェイスブックのアカウントでログインした状態であれば、公式ページへのアクセス状況や「いいね!」を通じた反応もわかるでしょう。その後、店舗では「いいね!」されたお気に入りの商品を購入されなくても、そのお客様がお帰りになった後で、その商品情報を再度フェイスブックでリマインドさせることも可能です。更に当該商品が掲載されているECサイトに誘導することで、店員は店舗では販売機会を失ったとしても、スマートに洗練されたコミュニケーションでその商品を購入いただけるようになるのです。

このようなデジタルマーケティングの取り組みは、ネットスーパーなどにも応用されています。従前のように織り込みチラシによってお客様を集客するだけでは多様化した消費者行動に適応できない、と悩む経営者が多くおられます。その解決策のひとつとして、ネットスーパーとサプライチェーンを連動させた宅配ビジネスの分野が注目されています。

とくに商店街や近隣スーパーマーケットが閉店した場合、その地域の住民が生活用品などの購入に難儀するという「買い物難民」といった社会現象は深刻な問題です。

もちろん、地域性や商圏の環境条件からリアル店舗に重心を置く経営者の方も当然おられます。しかし、日中に買い物に行く時間のないOLやビジネスマン層、買い物をしたくても徒歩圏内に店舗そのものがない地域の人々、外出することが困難なご高齢者層など、生活者を取り巻く環境によって、どのような方法で買い物をするのが最も良いかは全く異なります。一方でデジタル・ネイティブ世代を中心に、ネットと店舗を用途によって上手に使い分けることのできる世代もいます。つまり、最終的には個々の利用者に相応しい購買体験を提供することが最も重要になっているのです。

今後も、私ども富士通は、基幹システムに格納された各種業務データとデジタル戦略上で取得したお客様の行動や反応されたデータを組み合わせ、オンライン、オフラインの組み合わせによる"ヒト=個"、つまりお客様起点での企業マーケティングをご支援してまいりたいと考えています。

富士通の通信技術を使った新たな取り組みがあると聞いていますが、具体的にどのようなものでしょうか?

コンシューマ向け製品・サービスのブランド浸透実現には、テレビは未だに絶大なるメディア価値を持っています。ただし、現代のお茶の間の風景は、その様子が随分と激変しています。テレビを観ながら家族各人が、スマホを個々に手にしている、という光景です。つまり、テレビを観ながら、各人LINEをしたり、フェイスブックで「いいね!」をしたりして過ごしている。生活者の耳目がテレビ視聴率を叩き出すと同時に、ソーシャルメディアやECサイト等にも同時に接続しているという、「同時二元アクセス」をしているわけです。

ジャパネットたかた様と富士通は、家庭でのテレビ・モバイルに「二元同時視聴」のライフスタイルをいち早く予測しました。通信販売番組で、テレビにスマホをかざし、ヒトの目にはわからない付加情報を読み取ることで、商品紹介サイトに即時自動接続し、買い物ができる新しい買い物スタイルを実現しました。このシステムは、販促の観点からお客様の動きの洞察、コンバージョンの飛躍的向上に大いに役に立っているのです。

この事例には、ジャパネットたかた様の顧客体験価値向上に向けた熱い思いが根底にあります。番組映像制作の負荷を極力おさえるために、富士通はテロップを入れる要領で商品サイト情報を埋め込むシンプルな仕組みを実現させました。オウンドメディア(自社サイト)、ペイドメディア(広告枠として確保したサイト)、アーンド&シェアードメディア(ソーシャルメディア)、以上三つのクロスメディア戦略は、昨今、企業の宣伝・販促戦略に置いて重要なテーマとなっていましたが、旧媒体といわれるテレビ、ラジオ、雑誌の中核であるテレビとの融合が図れたことは、業界的にも大変注目を集めました。富士通の通信や映像技術が、企業の販促活動に活用いただけるようになった。「あらゆるデータを活用して、企業の売上拡大に寄与するICTの提案」。これこそ、デジタルマーケティングの真骨頂と言えましょう。

また、弊社が発表した新たな技術をもうひとつご紹介します。それが、「視線検出技術」です。「目は口ほどにものを言う」ということわざがあります。ヒトは、何かに興味を持ったり、何かの行動を起こそうとする際、無意識のうちに興味や行動の対象に視線を向けてしまいます。それが恋であれ、喉から手が出そうなグッズであれ、です。富士通はこのヒトの視線の動きに着目し、特殊なデータ分析ロジックから人の興味や行動を読み取り、"さりげなく"商品・サービスの補足説明やディテールを提供してくれるテクノロジーの実現に至りました。この「視線検出技術」を応用することで、来店者たちがどの商品に興味を持ったか、といったマーケティングに結び付くデータの収集・分析が可能になりました。売り場の案内図や、オリンピック・パラリンピック等で急増する外国人観光客向けにこの「視線検出技術」を活用したデバイスを提供することで、気になった別の売り場や目的地についてのインフォメーションを表示したり、音声ガイダンスを流すことなどが可能となります。どの活用法であれ個々の顧客や生活者の関心事を、これら先進技術を使ってリアルタイムの体験価値を提供できるようになったことは、リアル店舗や公共の場が、極めてイノベーティブな空間になることを意味しているでしょう。

今後、デジタルマーケティングの領域はどのように進化するのでしょうか?最後にその展望をお話しください。

IoT時代を迎えた今、デジタルマーケティング実践の最大のベネフィットは、「24時間絶えずインターネットとつながっている状態」の生活者が「常に心理変容を含む起伏あるデータを創出し続けること」だと思っています。デジタルマーケティング分野は、まだ企業が取り組みを始めたばかりで、お客様の業務の中に深く浸透するのはこれから、です。IoT時代において、ヒトを中心に、スマート化されたあらゆるモノ ~クルマや家電、医療機器、我々が身につけるモノ~ それら全てが新たな価値あるデータを創出していくことでしょうし、これらの膨大で複雑化したビッグデータの活用が、新しい事業価値創出の源泉となり続けるでしょう。

富士通は「触感タブレット」と呼ばれる新たな、ユーザー・エクスペリエンスを実現するテクノロジーの開発に成功しました。これは、ツルツル感やザラザラ感など、ECサイト上の商品に適用することでリアリティに溢れるタッチ&フィールを提供します。もはやタッチパネルが提供できる人間の五感のうち、味覚と嗅覚を除くものすべてがテクノロジーを使って再現できるようになったのです。これらもすべてデジタルマーケティングとして活用すべき領域です。顧客起点での、データを元に駆動させていくマーケティング戦略のパートナーとして、データから顧客が接触するデバイスやセンシング技術まで、トータルで提供できるのは、グローバルに見渡しても、弊社のみ、だと思います。富士通ならではの技術と提案力で、お客様と新たなビジネスの地平線を描いていきたい、と思っています。