クラウドで大きく変わるビジネスの現場(前編)

グローバル社会の到来と共に企業のICT活用にも変化が生まれ始めています。
従来、企業のICT活用は業務の効率化を図るための手段でしたが、今では新しい価値の創造や社会問題の解決に必要不可欠となっています。そして今、富士通のクラウドサービスが、ビジネスだけでなく社会の進化により農業や医療などソーシャルイノベーションの多くの現場においても積極的に導入されています。クラウドの登場で大きく変わるビジネスの現場について、この分野の第一人者である岡田昭広・執行役員クラウド事業本部長に語っていただきました。

昨今、「クラウドファースト時代」とも言われていますが、クラウドはどのような業界から使われ始め、どのように拡がっていったのか、お聞かせいただけますか。

最初にクラウドを使っていただいたのは、産業系と流通系のお客様です。今、ビジネスの現場では、単にモノを売っているだけでは儲からない時代です。したがって、単にモノを安く売るのではなく、顧客満足度の高いアフターサービス、付加サービスを提供していかなければなりません。そのため、モノを売った後にいろいろなサービスを提供する仕組みとして、クラウドが使われるようになってきたのです。

これまではハードウェアを調達するのに3カ月、開発を含め、構築するには半年、いろいろなことを含めると、1年はかかってしまいます。しかし、クラウドの場合は、契約すればすぐに立ち上がります。極端に言うと、今まで1年かかったことが1カ月でできてしまうということです。そして、ハードウェアも買わないので、失敗すればやめられます。そういう仕組みが作れるということで、ビジネスイノベーション分野、特に新規事業の仕組みに使い始めるケースが増えてきました。
その場合、例えば、お客様の個人情報のようなものは、社内の基幹システムに入っていて、その情報を参照しながら、このお客様には何を提案するかという分析や提案、表示するところはクラウドを使う、ということになります。

【利用範囲が拡がる富士通のクラウド】

利用が拡がるクラウドですが、その利用が進む中で分かってきたことを教えていただけますか。

ICTのシステムの歴史は約40年です。大企業では、メインフレームやUNIXサーバ、IAサーバなど様々な機器で、企業内システムや業務用システムが構成されています。そのような基盤を全部捨てて再構築することができればいいのですが、システムを構築する要素があまりにも大きく煩雑になっているので簡単にはできません。その上、既存の運用を行いながら、新規の提案もしなければなりません。したがって、既存の情報を活用しながら、新規の情報と連携していく「モダナイゼーション」の考え方が当たり前になります。大手企業ほど既存資産が大きいので、既存資産を活用するということになると、おのずとシステムのプラットフォームもハイブリッドになっていきます。

全体を見て既存と新規を組み合わせるという意味でのハイブリッドが必要なのですね。企業の重要なシステムをクラウドに展開する場合、そのセキュリティが心配なお客様もでてくるのではないでしょうか?

クラウドのセキュリティレベルはとても高く、個別に運用するよりも、クラウドに預けたほうが安全で確実です。事業継続の観点からも、クラウドを使っていたほうが簡単です。これを自前でやる場合は、システムが全部ウイルスに感染したら、いったん電源を落としてしまう以外に方法がありません。そのために、代替のバックアップセンターは最初に用意しておかなければいけないのですが、それは資金的に非常に難しいです。クラウドにすれば、バックアップも簡単にできるし、リカバリーセンターも簡単に使うことができます。

そうした仕組みを維持するには高度なスキルをもつ人材が必要と思われますが、どのような取り組みをされているのですか?

セキュリティについては、マイスター制度を作りました。三階層の人材を、2年間で700人前後作ろうと思っています。一番上は、ホワイトハッカーのような人で、一番下は、現場でセキュリティを守れる、消防団のような人です。そのための研修メニューを作り、制度化もしました。

【セキュリティマイスター制度】

セキュリティ面でも高度な人材に支えられたクラウドなのですね。

富士通が、インフラストラクチャーサービス(IaaS)のような最下層のサービスをなぜ作っているかというと、やはり最下層のところが分からないと、システム全体の信頼度が評価できないからです。また、運用に入ったときに、応答性、サービス性、お客様に対応するサービス品質の見極めも、自分でやっていなければ分からないのです。

そこで培ってきたノウハウを元にお客様のご要望に応じ他社のクラウドを含めたインテグレーションをする、そしてハイブリッド化のお手伝をするのが富士通の仕事のひとつだと思っています。

近年クラウドサービスには多くの企業が参入しており、標準化が進んでいます。この標準化、OSS(オープンソースソフトウェア)の動きが加速するでしょう。その中にあって、業界のリーダーとして標準化のイニシアティブを取り、性能と強固なセキュリティを担保した上でより良いシステムを構築していくことが重要になります。もちろん、使えるところは積極的にOSSを使い、標準的なものを活用していくようにすることが大事になってくると思っています。

富士通としては、目利きができる人材をさらに強化して、富士通の主戦場であるお客様のビジネス、業務に密着したシステム全体の構築と運用を舞台に活躍の場を広げようと思っています。

後編では、国内のみならずグローバルでも利用されている現場の最新情報をご紹介します。

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