ビッグデータが生み出す新たな価値とは?(後編)

社会に氾濫する膨大な量のデータをどのようにビジネスに生かし、イノベーションを実現するか。そのお手伝いをするのが「データの目利き達」です。富士通が提唱する「Big Data Initiative」について、前半に引き続き、ビッグデータイニシアティブセンター 河合美香センター長とビッグデータイニシアティブセンター 兼 富士通研究所 第二ソリューション研究部 渡部勇部長に語っていただきました。

ビッグデータが生み出す新たな価値とは?(前編)はこちら

社内データだけでなく、行政や公共交通機関、ソーシャルメディアなどがオープンにする「外部データ」も無視できない存在なのでしょうか?

2012年3月29日、米国オバマ大統領は、急速に増大するデジタルデータの活用を支援するため、「ビッグデータ研究開発イニシアティブ(Big Data Research and Development Initiative) 」を公表し、およそ2億ドルの資金を拠出しました。これは、大統領の諮問機関である科学技術委員会が、「ビッグデータ関連技術に対して政府投資を強化すべき」と提言したことがきっかけです。この発表を受け、米国内では政府や公官庁が持っているデータをビッグデータ化して公表し、国家が直面する自然災害や安全保障などの喫緊の課題解決に活用する動きが加速しています。

日本政府もこの動きに連動し、政府主導でビッグデータに力を入れると宣言しました。今後、ビッグデータのトレンドは、間違いなく、政府や官公庁などのオープンデータと呼ばれる「外部データ」と各企業が持っている「社内データ」という性格の異なるデータを組み合せることで生まれる情報イノベーションだと言われています。東日本大震災後に話題となった「震災ビッグデータ」はその具体例のひとつです。震災時に発生したカーナビ、携帯電話などを始めとする多種多様な膨大なデータを今後の「防災」や「町つくり」に応用しようという取り組みが全国各地で始まっています(渡部)。

富士通が提唱する「Big Data Initiative」について、教えて頂けますか?

ビッグデータをビジネスにしている以上、分析したデータがお客様にとって価値のあるものでなければなりません。価値があるかどうか分からないものを提案しても、ビジネスの現場では意味がないからです。そのためには、お客様のビッグデータを扱う私たちが、お客様の業務そのものを理解する必要があります。

ICTを通じてビジネスと社会に貢献したいと考えている富士通は、すでにさまざまな企業活動をICTを通じて現場レベルでご支援させていただいています。ビッグデータの分野でも「企業活動の現場を知っている」という経験が最大の武器となります。社内には、統計解析や機械学習、アルゴリズム開発などをデータ解析の研究者、実は渡部さんがその第一人者ですが、をはじめ、経験豊富なシステムエンジニアやコンサルタント、キュレーター(データサイエンティスト)、データアーキテクトから構成されるビッグデータのスペシャリストが1000人規模で在籍しています。こうした「データのの目利き」たちが、ビッグデータを活用し、お客様の業種や業態に最適なビジネスを提案いたします。この仕組みを体系的に表したのが以下の「FUJITSU Big Data Initiative」です(河合)。

ビッグデータ利活用に関する製品・サービス群体系 「FUJITSU Big Data Initiative」

経験豊かなスペシャリストの存在が、ビジネスの業種や業態に見合ったコンサルティングを可能にするのですね。

この分野のプロフェッショナル人材の育成に富士通は力を入れています。ただし、ビッグデータ分析の属人化ということではありませんが、分析自体が特定の人にしかできない状況に陥らないよう、ICTの先端技術を活用しております。お客様の現場でも同様に分析のプロフェショナルを育成いただきたく、富士通ラーニングメディアと教育コースも作り、現場のイノベーションお役立ていただければと考えています。

お客様に対しても、単純な「行動分析」や「需要予測」については、すでにパターン化されたソフトウェアが発売されています。しかし、お客様の個別の要望に沿って複数のソフトウェアを選択する、カスタマイズするなど、特別なデータ分析を必要とする場合には、当社のプロフェッショナルが対応を行うという仕組みです。

お客様のビジネスにおける競争優位を実現するためには企業や業種を超えた新たなサービスの開発などには自社内データや外部データを活用することによって、イノベーションが実現されていくと考えています。そのためには、お客様と私どもの業界をこえた連携も必要と思います。IoTの新たな取組におきましても、先週発表となりましたが、「共創」の場も作らせていただき、当社のテクノロジーとプロフェッショナルを活用いただければと考えています。

では、どこから始めるかということですが、富士通では、これまでの事例から10種のオファリングとして、お客様との活用の糸口となる提案をご用意しています。

ある時、ビッグデータをマーケティングに応用したいという相談が舞い込みました。社内でビッグデータを解析して、独自にマーケットリサーチの仕組みを作り、最終的にはそれを自社のマーケティング部門にやらせる仕組みを作りたいという内容でした。

そこでお客様の課題を当社のオファリングのひとつである「顧客接点情報の有機連携によるCXの実現」というオムニチャネルの活用による個にリーチするマーケティングのワークショップをさせていただきました。従来の本社でのPOS分析ではなく、売上を上げるための現場での個々のお客様のデータをどのように活用するかということになります。データの集め方、分析の仕方、見せ方などICTで新たなイノベーションを創り上げていくということです(河合)。

最後にビッグデータを普及させていく上での課題と将来の展望をお聞かせ願えますか?

ビッグデータを普及させ、それを会社の意思決定とプロセス改革に生かすためには、超えなくてはならない課題があります。個人情報はそのひとつですが、個人情報を完全に無くしてしまったら、それこそ情報の価値はありません。個人は特定されないが、データとしては使えるようにするプライバシー保護の技術が必要で、富士通研究所でも研究開発を進めています。また、企業が個人情報として集めたデータが、ビッグデータとして二次活用されることに対する社会のコンセンサスも重要です。

ビッグデータを介して私共とパートナーとして「協業」していただく上で、例 えば需要予測や障害予兆検知などを行う際に、会社にとってマイナスのデータを外部に持ち出すことに抵抗のある経営者が多くいらっしゃるのも現実です。

ビッグデータの活用を躊躇されている企業の多くは、組織も大型で、各部署がデータを保管しているので、経営者がそれらを大胆に活用できる状況にないのが現状です。ビッグデータでイノベーションを起こすということは、そもそも会社の意思決定プロセスそのものの改革も視野に入れる必要があるかもしれません。

今後、間違いなく社会のビッグデータ化は急速に進行します。IoT社会になれば、モバイルにもセキュリティーにもクラウドにも、全てにデータがあって、それらをどう活用するのかという議論において必ずビッグデータが関連するようになります。つまり、将来的にはビッグデータがある状態が当たり前になるので、わざわざビッグデータをビジネスに活用しようという提案そのものが意味をなさなくなる時代がやってくるかもしれません。

それと並行して、確実に世の中は、社会に多く設置されるセンサーのデータを活用するようになるでしょう。こうした時代の流れを敏感に捉え、その一歩先を提案できる「情報の目利き」をどれだけ揃えることができるか。私たち富士通の真価が問われていると思います(渡部)。