オンライン講義MOOCが、学びの形を変えていく

[特別講演]産学連携による日本発MOOCが拓く学びの新展開。MOOCがもたらす、企業・社会にとっての可能性とは

東京・有楽町にある東京国際フォーラムにおいて、2014年5月15日 木曜日、16日 金曜日の2日間にわたり、富士通最大のイベントである「富士通フォーラム2014 東京」を開催しました。15日の特別講演では、オンライン教育に長年取り組んできたパネリストたちが「MOOC」(ムーク:Massive Open Online Course)についてディスカッションを行いました。

受講者同士がディスカッションできるオンライン講義を、日本の大学も公開し始めた

2012年に米国の大学が中心になって開始されたMOOCは、インターネット上で誰でも無料で受講できる大規模講義です。スタンフォード大学やハーバード大学などを始め、世界中で数多くの大学がMOOCの講義を公開するようになってきました。たんにオンラインで動画コンテンツを見るだけではなく、参加者同士でディスカッションを行ったり、課題を提出して、修了証を受け取ることができる講義もあります。MOOCの日本における現状そして課題について、オンライン教育に長年取り組んできたパネリストたちによる活発なディスカッションが行われました。

2013年10月に設立されたJMOOCの事務局長である明治大学 特任教授の福原美三氏は、日本では高校や大学卒業後に学び直す人が少ないことを指摘、欧米のMOOCのプラットフォームに乗るだけではなく、それぞれの文化圏の特徴に応じて学び続けられる仕組みを作ることの重要性を強調しました。

京都大学 教授の土佐尚子氏は、MOOCの有力なプラットフォーム「edX」に京都大学が参加したことを説明し、第1弾の「生命の化学: Chemistry of Life」(上杉志成教授)の講義コンテンツを上演。複数分野にまたがる学際的な内容になっていること、また受講者同士がアイデアを評価しあう仕組みを導入することで、「知識を積みあげるだけでなく、新しいことを考えられる」講義を目指すということです。

MOOCによってキャリアアップを実現した受講者も現れている

北海道大学 准教授の重田勝介氏は、同大オープンエデュケーションセンターで進められている「SPOC」(Small Private Online Course:大学や企業内での非公開オンライン講座)について紹介しました。北海道内国立大学では教養教育の連携を進めており、平成27年度に向けてオープン教材の共同制作や双方向遠隔教育の準備を進めています。SPOCとMOOCを組み合わせることにより、教育の多様化や質の向上を図ると同時に、大学の魅力を世界に発信していくとのこと。

40名以上もの国内外のMOOC利用者を取材してきた、朝日新聞記者の金成隆一氏は、高等教育を受ける機会に恵まれなかった人々がMOOCでキャリアアップした例を多数紹介。MOOCで優秀な成績を収めたモンゴルの16歳の高校生が、マサチューセッツ工科大学(MIT)に願書を提出したところ、見事合格通知が届いたというエピソードには、客席からも驚きの声が漏れました。
「学びを再定義する時期が来ています」(朝日新聞 金成氏)

また、JMOOCの理事を務める富士通の伊東千秋によると、米国ではトップクラスのコンピュータサイエンティスト達が続々と教育分野に参入しており、投資ファンドからもMOOCは熱い注目を浴びているとこのこと。その一方で、MOOCでは最後まで修了できない受講者の割合が高いという課題も指摘しました。

今の社会に求められているのはどんな講義か、誰もがMOOCにアクセスできるようにするにはどうすればよいのか、MOOCと企業を結ぶには------。パネリストからは数多くの課題も指摘されましたが、教育の新たな可能性に胸躍らされた1時間半のディスカッションでした。

登壇者
  • 明治大学 特任教授、
    日本オープンオンライン教育推進協議会 事務局長 福原 美三 氏

  • 北海道大学 情報基盤センター
    メディア教育研究部門
    准教授 重田 勝介 氏

  • 株式会社朝日新聞社
    国際報道部
    記者 金成 隆一 氏

  • 京都大学
    情報環境機構
    教授 土佐 尚子 氏

  • 富士通株式会社
    特命顧問 伊東 千秋