「触感」が変える未来のインターフェース

人間にとって情報を得るために必要な五感、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。その中でも、約80パーセントが視覚から得られているといわれています。コンピュータのインターフェースも、視覚や聴覚に強く依存しています。

しかし、オンラインショッピングで「デザインは気に入ったけど質感がわかればもっと良いのに......」、電子書籍で「紙をめくる感覚や紙の質感があればもっと臨場感が沸くのに......」など思ったりしませんか? そこに触れるという行為が加わることで、きっと安心感が増したり、印象が変わったりするでしょう。

このような触覚を取り入れて、私たちがさらにリアリティを感じることのできるインターフェースを実現できるのではないか──そんな研究が、今、進められています。

ディスプレイ上に触感を表現することで、目で見るだけでなく、触って感じることもできるようになります。それを実現したのが"触感インターフェース"です。今回は、実際に研究に取り組んでいる遠藤主任研究員に、技術の仕組みや、今後目指しているものについて、語っていただきました。

研究者インタビュー

超音波振動で触感をコントロール

まだ利用されていない人間の五感をインターフェースに応用しようという発想自体は、それほど珍しいものではありません。超音波振動によって摩擦をコントロールする方法も、昔から広く知られていたことです。
では、なぜ今、富士通の研究者が、タブレットでそれを初めて実現することができたのでしょうか? それは、携帯電話の時代から、インターフェースに徹底してこだわり続けた経験があるからです。

触感インターフェースは、タッチパネルの表面を高速で振動させて摩擦抵抗を変化させることで「ツルツル」「ザラザラ」といった触感を実現しています。

物体を高速で振動させると、物体表面と指との間に高圧の空気膜が発生し、その浮揚作用によって摩擦力が低減します。この現象を利用し、タッチパネル表面を超音波振動させることで、摩擦抵抗が減少した触感、すなわちツルツルと滑らかにすべる触感を作り出すことができます。

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また、超音波振動を止めると、瞬時に、タッチパネル表面本来の摩擦抵抗に戻るため、ツルツルした低摩擦の領域と、ひっかかりのある高摩擦の領域の境界で、出っ張っているような錯覚現象が起こります。指の動きに合わせて超音波振動を細かく制御することで、単純なツルツルだけでなく、ザラザラや凹凸、ボタンの出っ張りといった触感を、指に感じさせることができるのです。

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こうした触感を、ディスプレイ表示と合わせることで、砂地を触ると「ザラザラ」、金庫のダイヤルを回すと「カチカチ」、ワックスできれいに磨かれた床は「ツルツル」......のように、あたかも実際の砂地やダイヤル、床を触ったかのようなユーザー体験を実現することができます。

触感がもたらす、まったく新しい操作感

触感インターフェースは、視覚、聴覚に加え触感を出すことで、新しいユーザー体験を生み出す可能性があります。

ユーザーが操作するボタンで凹凸を感じることができれば、触っただけでボタンの位置を把握したり、間違いやすいボタン同士を識別したりといったことが可能になります。視覚から得られる情報に制限があるユーザーがタッチパネル操作を行う際に、こうした支援は大いに役立つことでしょう。また、スライダーやダイヤルに「カチカチ」といったクリック感を与えることで、操作部を凝視しなくても適切な量の操作ができます。

さらに将来、よりリアルな触感を実現できるとしたら、どうなるでしょう?

たとえば、オンラインショッピングでシャツを選ぶとき。そのお店がお勧めだという「オーガニックコットン」の柔らかな肌触りを、手元のディスプレイに指を触れることで確認できます。素晴らしい肌触りだけど値段がちょっと......ということなら、それよりも価格が安い「ポリエステル混紡」のシャツの手触りも確かめておきましょう──といったように、あたかもリアルな店舗で買い物しているかのような体験が可能になります。

たとえば、祖父母のしわくちゃだけど何とも言えないぬくもりがある手の「触感」に包まれながら、今日学校であったことを得意げに話すことができたら──。今ある遠隔通信とは一線を画す、ぬくもりのあるコミュニケーションが可能になるかもしれません。

リアルな「触感」は、教育分野でも重要な役割を果たすでしょう。知覚教材の用途として幅広い応用が考えられますが、それだけではありません。発達支援の面で「触感」が重要な働きをすることが分かってきているので、そういったサポート分野でも応用が期待できそうです。

今後、触感インターフェースの研究、開発が進むことで、今の私たちが体験しているのとはまったく異なるユーザーインターフェースが、一般的になっていくかもしれません。

触感インターフェースは、富士通フォーラム2014に出展します。富士通フォーラム2014で、実際に体験いただけます。